07 甘い夜
「じゃあ、しようか。そういうこと」
ベッドで隣にいる婚約者を見つめつつ、ノアはそのように語りかけた。
するとフェリスは顔を真っ赤にして目を逸らした。
そんな彼女の更に恥ずかしがっている顔を見たくなり、ノアは言葉を付け足した。
「フェリスに魅力が無いわけない。俺はいつも自分を抑えるのに苦労してるんだよ。いつもそう言ってるだろう?」
「……っ」
そう言いながらノアは寝転がっているフェリスの上に乗り、顔を近づけた。
「ホント、フェリスは可愛すぎるんだよ。どれだけの男を虜にしていると思ってるんだ?」
「っ!?そ、それは…」
実際、フェリスのことが好きだという男は山ほどいる。
黄金に輝くサラサラの髪に、スッと長い四肢、そして何より美しい立ち振る舞い。
そんな彼女のことを好きにならない男など、男とは呼べないと言える程でもある。
なので当然昔からフェリスと仲良くしていたノアは彼女に惚れ込んでいるわけで。
「フェリス、好きだ…」
ノアはフェリスの唇を奪い、自分の欲望に身を任せるかのように何度も唇を合わせた。
「もう、いいんだな?これ以上進めば俺はもうフェリスを完全に自分のものにしてしまうぞ?」
少しだけキスを辞め、フェリスに最後の意思確認をする。
だがそんな確認、この二人にとっては不要なようで。
フェリスは全身を赤くさせながらニコッと笑いかける。
「うんっ。私を、私の全部を、あなたのモノにして…?♡」
「っ!?」
普段は気品があって美しい立ち振る舞いをしているのに、こういう時だけ彼女はとろけた表情を向けてくる。
「ああもう、可愛すぎだろ」
ノアは心の声が出ていることにも気が付かず、そのままフェリスに唇を当てた。
そしていつものキスより深い、舌を交えるようなキスをした。
脳までとろけてしまいそうになるほどに、甘くて深いキスを。
つい夢中になってしまい、息が切れるまで彼女を離さなかった。
「はぁ…はぁ…もう、ちょっと強引すぎない?」
フェリスは息を切らし、甘い息を漏らしながらノアの目を見る。
そしてノアはそんなフェリスを見て更に脳が熱くなってきて。
「いいだろ?今まで抑えてた分が爆発してしまったんだから」
「…そんなに我慢してたんだ」
「まあな。フェリスを大事にしたくてずっと我慢してた。でも、それが逆に良くなかったんだとようやくわかったよ。ならもう、我慢する必要なんてないよな?」
ノアの言葉にフェリスは頷き、そして目を瞑ってノアの行動を待った。
その仕草がそれはもう可愛くて、ノアはまたしても心を打たれてしまう。
「もー、可愛すぎるんだってフェリスは。俺を虜にしてどうするつもりなんだっ」
そう言いつつ、ノアはもう一度顔を近づけた。
それからどれぐらい時間が経ったかわからないが、かなり長い時を過ごし、ノアは顔を離した。
「よし、そろそろ終わりにするか」
これ以上盛り上がったらもう歯止めが効かなくなりそうだと感じたノアはついにフェリスの上から降りて隣に寝転ぼうとした。
だがしかし、そこでフェリスに服の裾を掴まれ、彼女に甘い声をかけられた。
「だめ…。もっと、もっと先まで…しよ…?」
フェリスはサウナにでも入っていたのかというぐらいに全身を赤くし、目をウロウロさせながら誘惑してくる。
(あーだめだ、可愛すぎる)
この数分で何度彼女のことを可愛いと思っただろう。
そんなの数えるだけで一日が終わりそうになる。
それだけフェリスのことが好きだということだろうが。
そしてそんな大好きなフェリスに今は完全に魅了されてしまっているわけで。
「最後まではしないからな。でも、途中までなら…」
「っ!!♡」
ノアはもう一度フェリスの上に乗り、彼女の顔の横に手をついた。
「じゃあ、触るからな」
「…うん」
少し緊張したような手つきでノアはフェリスの身体に手を伸ばした。