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06 謎の不安


風呂から上がるとノアはまたフェリスの部屋で二人きりとなり、現在絶賛イチャイチャ中である。


二人は大きなベッドに座り、ギュッと手を握ったまま軽く雑談をしていた。


「で、その時母さんが思い切りずっこけてさ」

「ふふっ、やっぱりあの人は変わらないわねっ」


そして話が丁度ひと段落し、夜も更けてきたようだったのでノアはそろそろ寝るかとフェリスに提案した。


「そうね。早いところベッドに入っておきましょうか」


うーん、なんか別の意味があるような気がするが、まあとりあえずはいいか。


ノアはフェリスのベッドの中に入り、彼女を迎えるように片方を空けて待つ。


そしてフェリスは魔法を使って灯りを暗くし、なぜか緊張しているような雰囲気で隣にやってきた。


別に一緒に寝ること自体は全然初めてでも何でもないのに、何で緊張しているのだろうか。


フェリスと全く目が合わず、そのような憶測を飛びかわせる。


(何か企んでいるとか…?)


ノアにはそれぐらいのことしか思い付かず、フェリスの行動を待っていると彼女はチラチラと目をこちらに向けながら口を開けた。


「ねえ、ノア…。私、あなたのことが本当に大好きなの」


フェリスの口からはとても嬉しい言葉が出てきて思わず驚いてしまうが、ノアも自分の気持ちを伝えて安心してもらおうと話し始めた。


「ああ。俺もフェリスのことが大好きだ」

「そ、そう…?ありがとう….」


フェリスは照れながら視線を彷徨わせた後、また緊張を加速させたかのような表情で真っ直ぐにこちらを見つめた。


「私ね…本当にノアと結婚したいの…。それぐらい、あなたのことが好き。ううん、愛してるの」

「っ!?」


愛してる、か。


好きな人に言われるとこんなにも嬉しいものなのか。


あまりの嬉しさに、ノアの心は満たされるような感覚にあっていた。


仮にお世辞であったとしても、この言葉は破壊力が高すぎる。


いや、フェリスのこの気持ちは嘘じゃない。


それぐらいは幼馴染であり婚約者であるノアはわかった。


そしてノアはこの嬉しさをフェリスにも味あわせてあげたいと思い、彼女に自分の本心を伝えてあげた。


「そうか。俺も愛してる。俺も、結婚したいって思ってるよ」

「そ、そう…両思いね…」


嬉しそうに、そして恥ずかしそうにフェリスは目線を下に向けた。


そしてフェリスはそのまま距離を詰めてきて、完全にゼロ距離といったところまでやってきた。


そこでフェリスが顔を上げると、目の前にノアの顔があって。


ノアが優しい笑みを浮かべると、フェリスは若干勢い任せにキスをしてきた。


「珍しいな。フェリスからしてくれるなんて」

「う、うん。そういう気分だったから」


そしてフェリスはそのままさらに距離を縮め、いよいよ完全に身体が密着してしまった。


「どうかしたか?」

「ノア…一つ訊きたいことがあるのだけれど」

「何だ?」


フェリスは身体を思い切り押し付けながらノアに問うた。


「私、女としての魅力がないかしら…?」


フェリスは虚な目を向けながらそのような不安を打ち明けた。


(魅力がない?何言ってんだこの人)


フェリスに魅力が無いのだとしたら、全人類魅力皆無じゃん。


そのようなことを反射的に思ったノアは結局フェリスの問いを理解することができず、彼女に説明を求めた。


「えーっと、どういうことだ?」

「だって私、こんなにもあなたを誘惑してるのに…いつも襲う素振りすら見せないし…」


(あー、そういう…)


フェリスは恥ずかしそうに顔を赤くしながらも説明を続ける。


「男の人は、好きな人や魅力的な人に誘惑されたら襲ってしまうのでしょう?でも、あなたは全く襲ってこなくて。私、好かれていないのかなとか魅力が無いんじゃないかって不安になってしまって…」


なるほど、襲わないのはかえって不安を招いてしまうのか。


確かに、好きな人とそういった行為をすることで自己肯定感が上がった人もいると聞く。


好きな人に欲情される、つまり自分に異性としての魅力があるというわけだ。


でもこのカップルはどうだろうか。


フェリスにはとてつもないほどの魅力があるにもかかわらず、ノアは何とか結婚まで我慢をするつもりだ。


フェリスにどれだけ誘惑されても、ノアは何とか強い心を持って襲わないように努めてきた。


だがしかし、その行為がまさかこういった不安を生むとは思っておらず、ノアは心の中で反省をする。


(確かに、女の子の側からしたらそういう不安を抱くこともあるか。何で気づかなかったんだ。フェリスはあんなにも頑張って誘ってくれていたのに)


今まで頑張って誘惑してくれていたフェリスの顔を思い出す。


フェリスはいつも全身を真っ赤にしていて、けれども勇気を出してこちらを誘ってくれていて。


(ああ…まだまだだな)


理想の夫にはまだ程遠いようだ。


だがせめて、少しだけでも近づきたいと思う。


これからの甘々な夫婦生活のためにも…!


ノアは今までの価値観を捨て、不安を胸に抱えているフェリスに優しく声をかける。


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