05 大欲情??
「ふぅ〜、いつ入ってもいい湯だな」
フェリスを助けた後、流れでヴィクトリア家に泊まることになったノアは現在凄い大きさの風呂に浸かっていた。
(にしても、この家はホント変なところにこだわりを感じるよな)
なぜかは知らないが、ヴィクトリア家の風呂はデカくていい湯が流れている。
多分この屋敷を作った時の当主かその妻が風呂好きだったのだろう。
(うちもこうだったらいいのに)
ノアも風呂は割と好きな方なのでこのレベルの風呂に毎日入れるフェリスをとても羨ましく思った。
と、そんなことを考えていると突然風呂の扉が開き、そこからタオルを巻いた美少女が入ってきた。
「フェリス…?」
「…」
顔を真っ赤に染め、視線をウロウロと彷徨わせている婚約者が風呂凸してきて流石に驚きが隠しきれない。
「え、えっと…なんで?」
目を見開いたまま当然の疑問を投げかけると、フェリスは頬を紅潮させながら軽く笑いかけてきた。
「せ、背中を流してあげようと思って…?」
「なんで疑問形」
「今日のお礼に?ご奉仕しようと思って…?」
フェリスは自分でもやりすぎだと感じたのか、今の自分の行動に疑問を抱きながら隣に入ってきた。
そしてフェリスが隣に来てようやく気づいたことがあった。
「なあ、俺タオル巻いてないんだけど」
そう、ノアはすっぽんぽんで風呂に入っているのだ!
元々一人で入る予定だったので仕方がないが、せめて取りに行かせてほしい…!
「べ、別に私は気にしないわよ…?」
「いや俺が気にするんだけど」
フェリスどこか意味深な発言にノアの妄想は加速してしまうが、首を大きく横に振って何とか打ち消す。
「よし!とりあえず俺は出る!フェリスは一人でゆっくり浸かれよ!」
このままではよろしくないと感じたノアは逃げるように風呂からあがろうとする。
だがしかし、フェリスに腕をガッチリ掴まれてしまって。
「だめ…。お願い。もう少しだけ…一緒にいて…?」
「っっっっ!!」
(クソ!可愛いすぎる!!)
流石に破壊力が高すぎてノアはつい心臓を射抜かれたかのように身体を後ろにのけぞらせてしまう。
その間にもフェリスは虚ろな目を向けてきて。
「わかったよ。でも、少しだけな」
「っ!うんっ!」
いよいよフェリスの可愛さに負けてしまったノアは腰を下ろし、そのまま婚約者の唇にキスをした。
「あんまり可愛い顔で俺を誘惑しないでくれよ?そのうち魔獣になって襲うかもしれないぞ?」
「いいよ…?ノアなら私受け入れるから…」
「………」
マズい、このままでは暴走しそうだ。
暖かいお湯に浸かっているせいか、どこか頭がボーッとしてしまうため判断力が鈍っている。
(いやダメだ。初めては結婚してからだ…!)
だがノアは強固な心を持ち、何とか自分を制御してフェリスに目を向けた。
「そういうのは結婚してからな。悪いけどこれは譲れない。だからそういうこと言うのもやめてくれ」
「…そう、ね。そうよね。ごめんなさい」
何とか折れてくれたフェリスの頭を撫でた後、ノアは腰を上げて手を差し出した。
「さ、身体洗うぞ。背中、流してくれるんだろ?」
「うんっ!」
フェリスは満面の笑みを向けながらノアの手を取って立ち上がった。
そして手を繋いだまま鏡の前まで歩き、ノアは椅子に腰掛けた。
フェリスは後ろでしゃがみ、石鹸を手に取って背中を洗う準備を始めた。
(よし、今なら__!)
フェリスがこちらから目を逸らしたのを確認し、ノアは身体強化をかなり強めにかけて一瞬でタオルを取りに行き、そして戻ってきた。
「?どうしたの?」
だが魔法が得意なフェリスには気づかれてしまい、不審そうな目を向けられる。
「え?ああ、身体を洗うためにタオルをな」
「そっか」
フェリスが目線を石鹸の方に戻したのを確認し、ノアは安堵して胸を撫で下ろした。
そしてタオルをいい感じに股間に乗せたままフェリスの準備が終わるのを待つが、身体を洗うためと言って持ってきたタオルを全く使う素振りを見せなかったため彼女にジト目を向けられる。
「身体、洗うんじゃなかったの?」
「ああ、洗うけど…」
「早くタオル手に持ったら?」
「……」
いや完全にわざとやってんだろ。
(もしかして見たいのか?何となく最初から視線を感じてはいたけど…)
もしかして性欲が強いのだろうか…。
(あんま人のこと言える口ではないか)
そんなことを考えつつ、渋々タオルを手に取って股間を曝け出してしまうのだった。