第3章 響きわたる炎にのせて 3-29
スキルを叫ぶと同時に辺り一面に眩い光が発生する
「ぐっ…」
里帆は腕で顔隠し光を直視しないようにした
光は数秒程で収束し消えていった、腕を下ろしオリアナの方を見ると空や地面に大量の武器が浮かんでいたり突き刺さっていたりした
さらに極め付けは、オリアナの数が5人に増えていた
錯覚かと思い目を擦り、今一度見てもやはり5人に増えていた
「何よそれ、5対1だなんて卑怯じゃない」
「安心したまえ、これはスキル時間を10分の1へと圧縮する事で出来るスキルだ
つまり、君は約30秒間程私の猛攻に耐えれば良いだけの話さ」
里帆はこの話を疑うような顔を見せていたが結局は、攻勢に出る隙を見つけるまでは防御に徹さなければならないと思い、覚悟を決める
「(加速スキルを今までみたいに身体の部分的ではなく、私の全細胞、思考能力全てに適応させる
デメリットの反動が相当キツくなるけれど
病院の時のユーみたいに痛みを持って耐えるしかないわね)」
オリアナは、1列になって里帆へと向かって行った
「(ちっ、成程ね
分身した自分を肉壁にすれば1人を犠牲にして後の4人が攻撃することが出来るって事ね
でも、この思考を加速した状態なら2人くらい補足出来る!)」
里帆がスキルで先頭の1人目を遅くする
スキルが発動し遅くなった事に気付いたオリアナは、2人目が左へ3人目が右へ4人目はジャンプして上へ
5人目が行動する前に補足して5人目を止めようとすると
スキルで遅くなっていた1人目を押し出し里帆へぶつける、そして1人目の腹から剣が飛び出し里帆を襲う
「(分身とは言え、自分ごと私を剣で貫くつもりっ?!)」
辛うじて回避するが間髪入れずに両サイドから攻撃が飛んで来る、片方だけを遅くして攻撃を避けれる位置に移動してから、残ったもう片方も遅くし避ける
安堵した矢先に今度は背後から迫って来る足音に気付き、それも遅くして避ける
そして、今度は空や地面から武器が飛んで来る
来る攻撃をリズムゲームが如く先に届きそうな攻撃を遅くして避けて避けて避けて避けまくるしかし、少しずつダメージを喰らい傷が増えていく、もうこのままいくと負けると思った矢先
攻撃の嵐は急に止んだ
疲労感漂う中周りを見渡すといつの間にか分身や武器が消え、目の前に剣を支えに膝をつき項垂れているオリアナが居るだけだった
里帆は達成感で胸がいっぱいだった
自分は乗り切ったのだ、あの苛烈な攻撃の嵐を
後は目の前で動かない王子様にトドメを刺すだけだと
加速スキルの反動で徐々に重く感じていく身体を引き摺りながら進む
残り数歩でトドメ用で隠し持っていたナイフが当たる距離という所で、オリアナが動き出し剣を突き出す
咄嗟に減速スキルで動きを止める
そのままナイフを突き立てようとすると、オリアナは最後の抵抗で口から針を飛ばす
里帆はそれがユーを襲った睡眠針だと一瞬で気付き、加速スキルを使いギリギリで回避する
最後の逆転の手立ても消えて、オリアナは死を覚悟し目を瞑る
しかし、身体に次の衝撃はやって来なかった
恐る恐る目を開けると里帆はその場で立ったまま寝息を立てていた
針は外したはずなのに何故?と疑問に思っていると通信が入った
「彼女の加速スキルのデメリットがテーマとデータから予測がついた
恐らくスキルを使う度に睡魔が襲って来るんだと思う」
「どうやってそれが分かったんだ?」
「映像を色んな方法で解析してたら
サーモグラフィーで見たら、スキル発動後に体温が徐々に低下していったんだ
これは寝る時の体温変化に酷似している
更に、彼女の顔を拡大して見ていると目の下にクマが出来ていたんだ、最初はクマなんて無かったはずなのに、こんな短時間でそれが出来るのは異常だと思ってね
それで、ウサギとカメの話から考察してそう結論付けたんだ」
「なるほど
つまり最後の針は、当たっても当らなくても寝る運命だったと…」
「何だかテーマに引っ張られているみたいで興味深いね」
「それじゃあ、私が引っ張られたらどういう負け方するんだろうね?」
「お前のテーマは荊姫だったな
確かあれは最後は、キスしてハッピーエンドか
なら、キスされて負けるんじゃないのか?」
「キスで負けるって何っ?」
「さぁ、知らん」
「君が言い出した事だろう!」
オリアナは、適当な返しに少しだけ憤慨するが
燈子はどこ吹く風な態度で話を切り替える
「こんなコントしている場合ではないぞ
どうやら、ジャックも戦闘が終わったらしいから
眠ってるソイツを担いでさっさと合流するぞ」
「……….」
何か言いたかったが喉まで出かかった言葉を飲み込み、無言で指示に従い
里帆を担ぎメアが闘っているであろうキャンプ跡地に向かうのであった
里帆vsオリアナ オリアナの勝利で決着




