第3章 響きわたる炎にのせて 3-16
あれから、2日後
あの子が目を覚ましたらしいと連絡を受けて俺達は病院に居た
「初めまして、私は里帆
あなたの名前は何ていうのかな?」
里帆が優しく語りかける
「鮫島愛芽梨です、9歳です
里帆お姉ちゃん、倒れていた私を助けてくれてありがとうございました」
はっきりとした口調で返事をする愛芽梨
「愛芽梨ちゃんはどうして自分が倒れたのかわかるかしら?」
「……よく覚えていないです、からだが少しずつ動かなくなってきて……気付いたらここで寝ていました」
「そうなのね、お医者さんによると愛芽梨ちゃんはお腹が空き過ぎて倒れちゃったみたいなの」
「それは、ちょっと恥ずかしいです」
理由はそれだけじゃなくて、暴力を振るわれた事による衰弱もあるんだろうけど、それを言わない事に少し疑問が生じたが何か意図があるんだろうと思って考えるのを辞めた
「初めまして愛芽梨ちゃん、おじさんは陸って言うんだ、好きに呼んでくれて構わないよ」
「じゃあ、りっくんって呼びますね」
「あはははは、可愛い呼び方して貰えて良かったなりっくん」
「え、えーユーまでそう呼ぶのかい?」
「いいじゃねぇか、いつまでもおっさん呼びされるよりも遥かにマシじゃねぇの?」
「あっ、ずるいなら私も陸さんの事りっくんって呼ぶわ
良い呼び方を考えてくれてありがとうね愛芽梨ちゃん」
「はいです、それであなたのお名前は何ですか?」
「おっと、悪いな
俺は優斗って言うんだ2人からはユーって呼ばれてるから、愛芽梨もユーって呼んでいいぜ」
「わかりました、ユー」
本当はすぐにでも父親の件を話したいが、ほぼ初対面の俺らが何かを言っても結局、父親の方を庇うだろうと俺達は結論付けて暫くは信頼関係を築こうという事になっていた
「そういや、入院って暇だろ?
何か暇つぶしに欲しいもんあったら言えよ、出来る範囲で用意するぜ」
「えーと、それじゃあ携帯電話が欲しいです」
俺は予想外に高いモンを要求されて驚いたが、里帆は優しく理由を尋ねる
「どうして携帯電話が欲しいのかしら?」
「お父さんと電話がしたいのです、急に居なくなってきっと心配しているはずです」
「「「…………」」」
俺達は無言で顔を見合わせる
父親の現状をきちんと話すべきかを視線だけで会話する
あの男は今病院と俺達からの証言で、虐待について児童相談所と警察に事情聴取の為、拘留中で外部との連絡が取れない状況にいる
この事を伝えても小学生が正確に理解出来るかもわからないし、これまでの態度から恐らくこの子は父親から暴力を振るわれいるのにも関わらず父親の事を好きなのだろうという事がわかるし、そんな子に父親が悪い事をして捕まっているとも言いづらい
「ああー、お前の父親は別の病院で入院しているから、今は連絡取るの難しいと思うぞ」
咄嗟に嘘を吐いた、癪だが後であの男と話して辻褄合わせしないといけなくなった
その日は、少し話しをした後に帰った
また次の日も訪れて話をして帰る、そしてまた次の日もと毎日誰かは、会うようにして愛芽梨との信頼関係を深めていった




