第3章 響きわたる炎にのせて 3-9
俺の名前は、田貫優斗
女なのに男みたいな名前と口調
これには、訳がある
って言ってもなんて事はない、よくある話の一つで両親に男として育てられた、ただそれだけだ
何故、男として育てたのか聞いたら
うちは、古い名家の末裔で後継ぎは男である必要がある
しかし、母は30を過ぎての妊娠だった為、次の子は望めないので俺に全てを託したいと言われた
聞いた当時、俺は7歳で周りから女なのにと男から揶揄われ、女からは男っぽいと敬遠される現状が堪らなく嫌だった、けど両親がそう望むならと傷ついた心に蓋をした
しかし、それは呆気なく終わりを迎えた
1年後に39の母親が奇跡的に妊娠し男の子を出産した
そこから手の平返しに態度が変わった
全てが弟中心になり、俺へ向ける愛情はほぼ0になりほっとかれるようになった
挙げ句の果てには、女の子なんだからしおらしくしなさいと怒られる
俺が我慢して来た意味は何だったんだ?
俺は、怒りを覚え全てを無茶苦茶してやろうと弟を手をかけようかと本気で思っていた俺を寸前の所で踏みとどまっていたのは、叔父さんの茶蒲さんの存在があったからだ
茶蒲さんは、所謂おカマで身体は男なのに心は女だった、そのせいで古臭い考えの両親とは犬猿の仲だったのだが
隙を見ては俺に会って愚痴を聞いてくれたり、お菓子等をくれたりと、俺は本当の親の様に思っていたが、ある日茶蒲叔父さんは行方不明になった、それを知ったのは警察が家来て行方を知らないかと聞かれた時だった
そこからは、俺は問題を起こしまくった
万引き、ケンカ、深夜徘徊
その度に親が呼ばれて謝っていた
俺はその時少しは、親に構って貰える嬉しさもあり非行に走っていた気もするが
中学に上がる頃には、親が謝罪するのは俺に愛情があるからではなく世間体の為にという事が理解し始めていた
そうなると、単純に親に対する反抗心から非行に走っていった
そして、気付けば高校生になっていた
高校に入っても相変わらず不良行為を続けていた
そんな中、人生が変わる出逢いを果たした
その日は、深夜徘徊をしてしつこいナンパに遭っていて俺はしびれを切らして相手を殴ってしまった
すると、相手は仲間を呼び5人に囲まれて、このままこの5人に無理矢理ヤラレるのかと覚悟し身構えた、だがそんな時に5人の背後から1人の男の声がした
「お巡りさーん、こっちでーす、女の子が男に囲まれてまーす」
その言葉を聞いた5人は、我先にと逃げ出してしまった
「でっ?おっさんは何?
俺を助けてどうかしたいのか?お礼に俺の身体でも狙ってんのか?」
その場に残された俺は、助けてくれたおっさんに礼を言うのでもなく、寧ろ真逆の罵声を浴びせた
「ハハっ、余計なお節介だったかな?
それじゃあ僕はこれで」
だが、おっさんは気にした感じも無く、ヘラヘラした態度でここから去ろうとした
その態度が無性に腹立たしく、さらに罵声を浴びせる
「何だよ、ただの正義気取りの偽善ヤローかよ」
「そう思ってもいいよ
やらない善よりやる偽善ってね」
それでも、なお笑顔を崩さず答えてくれた
俺はその性でさらに怒りを募らせるが、そんな心情を察しもせず
「はいこれ、僕の名刺何か困ったら
この場所に来るか、この番号に電話してもいいからさ
深夜に出歩くのは、危ないからもう辞めておいた方がいいよ」
自分の名刺を一方的に渡して、どっかに行ってしまった
いきなりの事に数秒の間、放心状態で渡せれた名刺を眺めていたが、ハッと意識を戻して
おっさんに一言でも文句を言ってやろうと、去って行った方へと目を向けるがおっさんの姿はもう無く、在るのは怪しく光るネオンに照らされる人混みだけだった
何とも言えぬ気分のまま、家に帰りベッドに寝転がっても、もやもやとした気分の性で寝付けない
何故、俺は今日初めて会ったおっさんに対して、こんなにもおっさんに怒りや不安を感じているんだ?と考えてもなかなかに答えは出ない
なので、睡眠薬を飲み無理矢理に眠った




