第2章 ひび割れた純真 2-32
医者になって7年が経った
知童は、日々の業務に追われながらも親父殿の言葉を守り、辺見と切磋琢磨しながら働いていた
そんなある日、知童は1人の患者に出会った
その子は、心臓の病気で余命が幾ばかもない状態だった
名前は、蛇田多留姫
彼女は、既に未来への希望を無くして絶望していた、ドナーが居れば助かるかもしれないが確率は低い
その状況を見て、知童は多留姫を救う事が自分の天命だと思い、彼女を治すのに全力を尽くす事を決めた
先ずは、親父殿と同じ様に多留姫の心を元に戻す
無視されようとも何度も何度も話しかけて、最終的には笑顔を見せてくれるまでになった
そうしつつ、知童は裏で多留姫の病気について詳しく調べていた
それで、ついに海外には治った症例があることを突き止めた
しかし、日本ではまだ認可されていない治療法であった
なので知童は、論文を作り臨床試験という形で多留姫の治療しようと考えた
しかし、提出した論文は医院長により棄却された
目の前で否定され、コピー用紙を破かれた
医院長の言い分は
「もし、失敗して死んだらどうする?
君じゃ責任取れんだろ?
それで、この病院の評判が下がったらどうする?」
世間体を気にしての消極的なモノだった
それでも、知童は食い下がった
「だからと言って、そのまま放置していても死ぬじゃないですか
それなら、手を尽くしましたと言えた方がいいんじゃないでしょうか?」
「はぁ、元々治るかもわからないんだろう?
だったら世間様も許してくれるだろうよ
だからね、そんな物に時間やコスト掛けたくは無いね」
「医院長っ!!」
尚も喰らいつく姿勢の知童に医院長はイラっとしたのか
「うるさいな、君っ!
そうだ、決めたよ
君は内科から外科へ移動だ、そうすればこういう余計な事もしないだろう」
異動を命じた
「ッ………」
知童は、目の前の視界がぐにゃぐにゃと崩れた
そのまま、部屋を後にした
酔っ払い様に千鳥足でフラフラと院内を歩いていると、その知童の異常な状態に気付いた辺見が声を掛けて来た
「知童、何があった話してみろ」




