第2章 ひび割れた純真 2-31
大学に通っていた知童は、肩身の狭い思いしていた
周りは金持ちの子供ばかりで、自分とはえらい違いで気遅れをしていた
それが悪かったのか次第に周囲から無視をされる様になった、だが負けるもんかと逆に対抗心を燃やしていた
そんな知童に1人の男が近付いて来て声をかけた
「君がこの前書いたレポート、非常に興味深い
詳しく話を聞いて良いだろうか?」
その男は辺見八郎だった
その時から知童は、辺見とよく話すようになり、さらにはプライベートでも遊びに出掛ける仲になった、それは親友と呼べる程の間柄になった
そして、大学の卒業が無事決まり配属先を探していると
「知童、私と一緒の病院へ来い
時間は掛かると思うがお前の望む事を叶えてやる」
相変わらず上から目線の物言いだがそれが信頼から来る言葉だというのが分かる
「しょうがないな」
そう返しながら、差し出された手を取り、俺達は同じ病院へ勤務する事となった
その事を親父殿に報告しようと浮き足立ちながら家に入ると、親父殿が倒れていおり、慌てて救急車を呼んだ
待合室で親父殿の無事を祈りながら待っていると、親父殿を診てくれた担当医から結果が伝えられる
どうやら無茶なオーバーワーク等で心臓部に大きな負担が掛かっていたらしく重症心不全で移植手術でもしない限り回復するのは難しいらしい
しかし、心臓移植のドナー等そう簡単に見つかるはずがないと諦めかけていたが、運良くドナーが見つかった
容体を診つつ一カ月以内には手術が出来る目処がたっていた
だが、運命は知童達を弄んだ
決まっていたはずのドナーが急遽、別の患者へと変わった
突然の変更に知童は、怒り狂い担当医を問い詰めた、そうしたら金持ちの患者が金を積んで優先するように働きかけたとの事だった
憤慨し知童は、件の金持ちを殺そうとさえ考えた
その殺意に気付いたのか親父殿が言葉をかける
「怜、今の世の中こうゆう理不尽が罷り通る
そういうのを君が内側から変えてくれると嬉しい
けれど、この純粋さを押し通そうとすると代償に居場所を失う、かつての私の様にな」
「かつての私?」
「ああ、そうだ
私は、君を助けた事で上に背いたカタチになったんだ」
「一体どうゆう事だ?」
「実は、あの事故を起こした関係者の中に政治家のご子息が居たらしくてね
どうやら、被害者が全員死ねば事実を如何とでも捻じ曲げる事が出来ると思っていたらしくて、運ばれて来た時には手遅れでしたという体で見殺ししてくれと指示されていたんだよ
見返りは、多額の寄付金でね」
知童は、絶句した
あの事故にそんな裏があった事に、だとしたら親父殿は私を助けた事で相当なペナルティがあったことは、想像に難くない
親父殿は言葉を続ける
「私がね、何を言いたいかと言うと
その純真を押し通そすとしたら、一緒に背負って行ける、仲間を見つけなさい
そうすれば、1人じゃ無くなるだろ?」
そう言われ、知童の脳内には辺見が思い浮かんだ
「心配要らなかったみたいだね、その顔はどうやらもう仲間が居るみたいだね、安心したよ」
その言葉を吐いた親父殿は、心の底からの笑顔だった、私はその笑顔を妹の形見を握り締めながら見届けた
そして、親父殿はこの日より一週間後に、息を引き取った




