第2章 ひび割れた純真 2-30
知童は勝ちを確信していた
最後の30秒の猛攻は、生きた心地がしなかった
だが、それを乗り切った
目を見開いたオリアナと目が合う、彼女は剣を構えたまま固まっていた
そのまま知童は、反撃に移ろうとして近付いた
すると、突っ立ったままだったオリアナが急に先程と同じ速さで突っ込んで来た
どうして?10分経ったはずだろ?
なら何故まだ、このスピードでいられる
驚愕で固まってしまった
それが間違いだった、棒立ちのまま攻撃を喰らった
亀裂の入った鎧を壊しながら剣は進んだ
知童の身体には、大きな創傷が走り血が溢れ出る
そのまま、後ろへ倒れる
倒れながら、走馬灯が走る
知童がこの感覚になるは、人生で2度目だった
知童は、目を瞑りその記憶に身を委ねた
知童怜は、32年前にこの世に生を受けた
父はサラリーマン、母は専業主婦で都会暮らしという至って普通の家庭に生まれた
3歳の頃に妹にも恵まれ仲良い家族だった
だが8歳になる頃に運命の転機を迎えた
その日、知童一家は高速道路を走っていた
すると、後ろの車から猛スピードで走って来る2台の車があった
それらは、カーチェイスをしてようだった
互いにレッドヒートしているのか前を走っている知童一家の車に気付いていなかった
そして、悲劇は起きた
100キロ近い速度のままこちらにぶつかった
その勢いで知童一家の車は壁へ衝突
前の席にいた父と母は、潰れて即死だった
妹と私は、かろうじて生きており、緊急搬送された、そのおかげで私は命を繋ぎ止めた
しかし、妹は懸命な治療も虚しく息を引き取った
妹の最後の言葉は
「いたいよ、たすけて
おにぃちゃん、あかあさん、おとうさん」
だったそうだ
目を覚ました私に医者がそう伝えてくれた
そして、泣いている私に生前、妹が大事にしていた、お菓子のオマケに付いていたおもちゃの指輪を渡してくれた
この事故で知童は家族を失った
家族を失い日に日に生きる気力が無くなっていく私を1人の医者が甲斐甲斐しく世話を焼いた
最初は、何度も何度も話しかけて来るソイツに対して鬱陶しく感じていた
でも、遠ざけても寄って来るその医者に、だんだんと心を開いていき、最終的にはその医者の養子になった
そして、いつしかその医者を親父殿と呼ぶようになった
その親父殿は、どんな相手でも分け隔て無く治療したいと志を語っていた
金持ちだろうが貧乏だろうが必要に応じて平等にと
知童はそれを聞いて育つ内に自分もそういう風になりたいと思う様になっていた
そうして、知童は医者の道へと歩み出した




