序章 めくるめく運命 0-2
友人と別れ
帰り道に大きな公園の近くを通りかかると木が倒れる音が聞こえた
気になってそちらの方を向くが遠過ぎてよくわからない
見えないのならと諦めてその場から立ち去ろうとすると
もう一度木が倒れる音がする
それと同時に獣が吠えるような声が耳を劈く
声を聞き恐怖心と好奇心が同時に湧きあがる
しかし、僅かに好奇心が勝ち公園へと入って行き音のする方へと足を運ぶ
倒れた木を道標にしながら進んでいくと
人が1人木に持たれるように倒れていた
その人は、真紅のフードを被っており
足からは血を流していた
その光景を見て俺は固まってしまった
動けないでいると倒れていた人物がこちらに気付いたようだ
そして、大声で叫んだ
「逃げて!」
その言葉を理解するかしないかの一瞬の間に
車に轢かれたのかと思うくらいの衝撃が走ったと思ったら
次の瞬間には体に浮遊感を覚えた
地面に衝突した痛みで意識がはっきりし始めた
とりあえず現状を確認してみる
身体には激痛が走るっているが、まぁなんとか動けそうだ
ふと顔を上げると
3mはあるであろう体躯に全身は黒いオーラの様なものが覆っており
頭には牛の角の様なものが生えており
目は、爛々と輝き口にはギザギザの歯
腕は丸太の様に太い
まさに、怪物としか言いようがない
目の前の現実に脳が混乱し
何だ夢かと謎の認識が頭の中に出始める
しかし、身体が痛むのでやはり現実かと思い
脳内が夢と現実の狭間でぐちゃぐちゃになり困惑して動けないでいると
少女が
「大丈夫!?」
と叫びながらこちらの身体を起こすのを手伝ってくれた
ふらつきながらも手を貸してもらい起き上がると
そのまま身体が急に後ろに引っ張られる
すると、目の前に化け物の丸太の様な腕が突き刺さる
後ろに倒れた事で間一髪でヤツの拳を避けられた
呆然としつつ後ろを振り返ると
先程の少女が俺の服の裾を掴んでいた
自分を引っ張って怪物の攻撃から助けてくれたのだと気付いた
そう認識した瞬間
目の前の怪物が大きな声で吠えた
そして、馬鹿の一つ覚えみたいに俺達を狙って拳を振り下ろしまくる
それを俺達は紙一重で避けながら話す
「これは一体どうゆう状況なんだ?!」
「知らない、気付いたらこの場所に居て
あの怪物に襲われた」
「それじゃあ、どうしたらいいんだよ!」
俺はやり場の無い怒りをぶつけるように少し声を荒らげるように叫ぶ
「でも、この状況を打破出来そうな策はある
だけど、それにはあなたの協力がいる」
2人がかりで挑んだところで到底敵いそうにないが
他に選択肢もないので協力するしかない
「わかった、手を貸そう
それで、俺は何をすればいい?」
「ありがとう
私と”契約”して欲しい」
「????けい...や..く???」
何を言っているんだ?頭がおかしいのか?
それとも俺の聞き間違いか?
「その顔は私の言っている意味が分からないって感じね」
「ああ、いきなり契約とか言われても何のこっちゃ意味がわからん」
「でしょうね
でも、今は詳しく説明している時間はないから
取り敢えず片手を私に差し出して」
それだけで、状況が一変するならと後ろに下がりつつ
無言のまま左手を少女に差し出した
そして、少女は俺の手を掴みながら宣言する
「貴方を私の詠手として契約する」
少女がそう宣言すると
掴まれていた左手の甲が若干の熱を帯びる
手を見ると不思議な模様が刻まれていた
しばらく模様を眺めていたが
危機が迫っていたのを思い出し
この後どうすればいいのか分からず
少女に指示を仰ごうと少女の方を向くと
少女は怪訝そうな顔をして怪物を凝視していた
なんと怪物が動きを止めていたのである
そして、怪物もこちらの方を凝視していた
俺達と怪物はお互いを睨みあいながら
一発触発の空気が流れ微動だにしなかった
どれくらい時間が経ったのかわからない
しかし、ふいに怪物が動き出した
こちらに背を向けそのまま去っていったのであった
気が抜けてその場に座り込む
心臓の鼓動は早いままで
落ち着かさせるために深呼吸をする
息を整えながら少女に声をかけようとすると
少女は独り言を呟いていた
「契約した途端に去っていったってことは
未契約のプレイヤーだけを狙ってた事...?」
その独り言の内容は全く理解出来なかったので
素直に聞いてみる事にした
「その契約とかプレイヤーって言うのを教えて欲しい」
「わかった、契約した以上これからは
運命共同体になるから質問に答える
でも、まずは安全な場所に移動しよう」
「なら、俺ん家が近いからそこで話して貰おうかな」
そうして、俺達は家に移動する事にした