第1章 潮風に混ざる鉄 1-22
「頼む待ってくれ
もう、そこまでにしてくれ
お嬢を殺さないでくれ」
頭を撃ち抜こうとした瞬間に大声を出しながらこちらの方へ走ってくる人がいた
セバスと呼ばれていた青年だった
セバスは、到着するなりすぐに銃と人魚姫の間に入り土下座した
メアも流石に頭を下げている人間を撃つのは抵抗があったのか撃ちかたを辞めた
「おい、そこをどけ
このままだとお前ごと撃ち抜くぞ」
顔を上げ人魚姫を庇うように両手を広げてセバスが叫ぶ
「このまま、お嬢が殺されそうなのを黙って見てるくらいなら俺ごと撃たられてもいい!」
「……セバス」
「俺、昨日お嬢に散々言われたんで
ちゃんと考えたんですよ
そしたら、目の前でお嬢が死にかけるよりも自分の知らない所でお嬢が傷付く方がもっと嫌だって気付いたんですよ」
「どうして、そこまでするんだ?
話を聞く限りお前ただの雇われだろ?」
メアが疑問をぶつける
それに対してセバスは、淡々と語り出した
「自分、幼い頃に親の借金のカタにお嬢の父親に雇われたんですよ
だから、最初忠誠心なんてこれっぽっちもなかったし、幼い自分を他の使用人もよそよそしくてあんまり馴染めてなかった
けど、お嬢だけは自分に普通に接してくれたんですよ
それだけじゃなくて、自分を専属従者にしてくれたんです
だからお嬢は、俺の恩人なんです」
「でも、前回お前そいつが負けそうになったら笑ってたじゃん」
メアが直球の質問をする
「あれは、お嬢がこれ以上傷付かなくていいと思ってしまったのと自分の責任でお嬢が死ななくてよかった安堵感で笑顔になった…
あの時、自分の事しか考えてなかった
……お嬢のこのゲームにかける熱量を知らなかったんだ
だからあんな酷いことをしてしまった」
そう言ったセバスの顔は、罪悪感に満ちた顔をしていた
「それで、結局どうするの?
貴女は、負けを認めるの?」
話を聞き終えたメアは、人魚姫へ再度質問する
「セバスの命がかかってしまったんですもの
降参しますわ」
人魚姫は、諦めたように言う
「………逆にお前にとってのセバスって何だ?」
「質問責めですわね
でも、敗者なので勝者の言う事聞いて差し上げますわ
私のとってセバスは、私が初めて選んだモノですわね」
「選んだモノ?」
「私は、産まれてからずっと父が選んだモノしか与えられてきませんでしたわ
父曰く私は、愚かなので自分で選ぶと必ず失敗するだろうとのことで
おもちゃも食事も習い事も果ては、交友関係まで父が選別しました
使用人も父のいいなりで毎日着る服すらも私に何も選ばせてはくれません
まるで私は、父の人形ですわ
そんな中セバスは、唯一私に普通の人間ように接してくれましたので、自身で選んで専属従者にしましたの
なので、私とってセバスは自由の象徴ですの
だから、セバスが死ぬという事は私の自由が失くなると同義ですの」
「って事は、元々セバスを詠手から外すつもりはなかったってことか?」
「ええ、今後はスキルの制作のみさせるつもりでしたわ
でも、セバスがどんな事があろうとついて来ると言質をとれたので今回は、負けを認めてもお釣りが来るくらいですわ」
そう言ってセバスの方を見る
視線を向けられたセバスは、気恥ずかしい様子だった
「最後の質問だ
お前の願いは何だ?」
「自分で何でも選べる自由を得る事ですわ!」
人魚姫は、笑顔で言い切った




