紙飛行機が大気圏を突破する日
「そりゃお前、紙飛行機が大気圏突破する日だな。」
「まじか。」
「ああ、まじだ。」
どんなテンションでこんな会話をしているのか……
断言する。紙飛行機が大気圏を突破する日は来ない。なぜなら紙飛行機は推進力を持たないからだ。人の手によって放たれた紙飛行機は泳ぐ様にスーっと空中を流れて行くもの、空に向かって上昇したりはしない。もし、なにかしらの方法があって上昇したとしても所詮は紙だ、高度が上がるにつれて厳しくなる環境に、まぁ無事ではいまい。つまり、そんな日は来ないし、来たとして無事では済まんのだ。
なんだそれは!
最初に耳にした瞬間は物凄く浪漫溢れる雰囲気を醸し出していたのに、言葉の意味を考えてみたら夢を希望もありゃしない。
いや待てよ?
紙飛行機が大気圏を突破する可能性を考えるのではなく、その日にちに意味があるのか?どう考えても不可能な事柄が起こり得る日!?そっちの意味なのか!?それくらい素晴らしい日、そう言う事か?!
待て待て待て、惑わされるな!
コヤツの醸し出す雰囲気に振り回されてるぞ!俺!!
思い出せ、ほんの数秒前の事じゃないか、そもそも何であんな妙ちきりんなワードが飛び出たんだ?そうだ!そうだよ!たいして応えなんて気にしてない独り言みたいな俺のボヤキ【あ~、もぉすぐクリスマスが終って、なんだかんだでバレンタインかぁ。】に対しての応えじゃないか。
終業式に男二人の帰り道、天気が良くて、あったけぇから、公園でボケ~としてる灰色の青春を送りそうな俺への、俺達への……
って、事は?
「え?まじ?」
「まじ!」
もぅ間もなくクリスマスが来てしまう。バレンタインも何も無く過ぎ行くだろうという俺の嘆きは、冬のイベントは【紙飛行機が大気圏を突破する日】だと言うのか!!
聞けぬ。それはいったいどちらを意味するのかなど、聞けぬ。
妾は聞きとうない。
青春を街並みと同じ色に染める事が出来るのか、このまま灰色に向かうのか。前者であって欲しいが俺にその兆候は無い。そうであった場合、コヤツが一足も二足も早く春を感じている事になる。
後者であるならわざわざ二人揃って万に一つもモテる事が無いとなぜこの穏やかな時間に輝く瞳で視線を空の彼方に向けたのか……
ここは一つ、勇気を出して聞くべきか、友人として、あえて、この摩訶不思議な妙ちきりんワードに対し、真っ向から勝負を挑むべきか!
いや
それは
【紙飛行機が大気圏を突破する日】
に聞くとしよう。