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「私もショックだわ!」と美月はさらに彰人へ追い討ちをかける。彰人が来てくれないなんて私もショックだ、と言いたかったのだけれど、もちろん美月の本心ではない。カッとなって衝動的に言ってしまったのだ。
「じゃあ今週の日曜日に2人でお祝いしようか。そのときに花束渡すから」
彰人の提案により、美月の機嫌もなおったようだ。
「実は彼女としょうもない喧嘩してさ〜」24歳の堀彰人は職場で隣の席の大浦芽生と雑談をする。
「彼女と何があったん?」芽生は興味津々だった。彰人の斜め前にいる石井奈苗は電話対応中だったけれど、電話が終わるなり奈苗も「なになに? どうしたんですか?」と彰人の話に食いつく。
「卒業式に来てほしいって言われて、仕事あるから無理って言ったら機嫌悪くなっちゃって……」と彰人は言う。
「まあでも大学生だし、卒業式に彼氏から花束をもらうことがステータスって思ってるかもしれないね。まあ私からしたら若いなって思うけど。彼女も働き出したら簡単に仕事休めないのわかるよ」
28歳の芽生からすれば、彰人の彼女の考え方は若いというか幼いと思ってしまうのも頷ける。