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これは今まで思っていたことをぶちまける絶好の機会だ。そう思った愛永は、挙手して発言する。
「いつもべったり付いてきて他の友達と遊べないこと、私が他の子といると『私のこと好き?』って聞いてくること、なんでも私に聞けばいいと思ってること、全部嫌でした」
笹木さんはショックを受けたのか下を向いていた。が、こうでもしないと福島先生は私の気持ちなんてわかってくれないと思っていた愛永は今までの気持ちを全て吐き出す。
愛永は同時期、中学受験に向けて勉強もしていた。親には「将来は留学したいから、英語に力を入れている私立中学校に行きたい」と話していたけれど、それ以外にも笹木さんの呪縛から逃れるためでもあったのだ。6年生の1月に志望校の入試を受け、晴れて合格した。これで笹木さんから解放される。そう思うと、愛永は晴れ晴れした気持ちになった。
大学2回生の桜井凛は京都市内のレンタル着物店で受付のアルバイトをしている。ある日、凛のアルバイト先に東京から来たという50代くらいの夫婦が来た。妻の方からなんとも言えぬ威圧感を感じ、この人は普通ではないかもと凛は悟る。




