SSR級のアビリティ
「だって巫女さまはこのボクたちを見て、狐だの犬だの言い当てたんだぜッ?」
「そうそう。まぁオレたちが狐っていうのはさ、太秦さんが先に話していたけどよ? でも巫女さまは、狛のことも犬だって当てただろ?」
「あっ、そうです。確かにです! ヤタノカラスさんという種類の烏さんがいらっしゃるのも知らなかったのですが、いつの間にか私そう呼んでいました!」
「「八咫烏な!」」
白狐と黒狐の二人は「なんで太秦さんだけそうなのー」とケラケラと笑った。
「陽の巫女、これからは名前で呼んで欲しい……」
「分かりました。ええっと、太秦さん? これからどうぞよろしくお願いします」
「こらこらこら、そこの烏っ。ふら~っと睡蓮に近寄るな、ふら~っとっ。はぁ……全く油断も隙もあったもんじゃない……。話を戻すけど、言い当てたのはなんか偶然っていうか、睡蓮は寮で犬を飼っているし、純粋だから狛に対して近いものを感じ取っただけかもしれないだろ? 信じられるかよ」
「いやいや、まだあるし。な、黒狐?」
「そうそう、決定的な証拠が——」
「美月、昂。あれを見てみろ」
「まだオレが喋っているだろーッ!」
台詞を取られて怒る黒狐を気遣いながらも、睡蓮は昂と一緒に狛が指差した方向へ目をやった。
高い天井まである格子戸越しに見えたのは、美しい大きなまんまる。
「あれとは、お月様のことですか?」
「ああそうだ。大御神……つまり陽の神がお隠れになってからは、今宵が初になる。月は太陽が無ければ、ああやって視界には捉えられない。けど美月、陽の巫女のお前には、月を輝かせる特別な力が宿されていると云う」
「うん。それから大御神がリスポーンするまで、太陽は昇らない。存在しないんだよ」
「だから当然、月の満ち欠けなんてのはない。あそこに月が浮かび上がってるのは、SSR級の巫女さまのアビリティのお陰ってわけ」
狛の話に白狐と黒狐が補足した。
「わ、私にそのような力が。何もしていませんのに」
「ああ本当にお前は不思議だ。それで俺たちについてだが、ここ高天原にある倭を護る為の使者を使わしめと言って、中でも能力の高く大御神に仕えていた俺たちをヤマトという役職名で呼ばれる。しかし今は、大御神がお隠れになった根源である須佐神がヤマトの名を語って好き勝手している。だから大御神側の俺たちはハヤトに名を変えたんだ」
「はぁ、ハヤトさんにですか……」
「分かるな? 大御神を再降臨させるため、お前はこの異世界に導かれて舞い降りた陽の巫女。俺たち使わしめの伝承に登場する舞姫なんだ」
「伝承の……? わっ」
昂が、ぶかぶかの狩衣の手元を掴む。
「ほだされるな睡蓮。お前らの伝承なんて知らない、行こう」
睡蓮を強引に連れ出そうとする昂に、狛も力強く睡蓮の手元を掴んだ。
「美月は狙われる身にある。やめておけ」




