表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアル異世界転移 お約束のチートはないんかい!  作者: 木浦木ロロ
ここは異世界?
4/1027

まず、やることは決まってるっしょ!

うん、(らち)()かねぇー。今、もしこの場にオレ以外の誰かがいたら、説明なり、最低でも、ここがどこかぐらいの情報は得られただろうが、残念ながらオレOnly状態。訳分からんオレが、いくら悩んだところで、この状況は変わらない。オレは自分が異世界転移したってことで、一旦、落とし所をつけることにした。一応、な。


実際は夢を見ているのかもしれないし、年を取って(ほう)けてるのかもしれないが、そんなことは今のオレには断言できない。夢ならそのうち覚めるだろうし、痴呆が入ってるなら、そのまま老衰まで持ち越せば、痛みを感じることなくあの世へ行けるかもしれないし。痛い思いをするのはもうゴメンだからな。


でももしマジもんの異世界転移だったら、だよ?マジ、サイコーじゃね?だって異世界転移だぜ?


リアルにそんなことあるわきゃねーって、冷めた気持ちをどこかに(いだ)きながら、それでも休日や、仕事から帰ってきて『さぁ寝るか!』ってベッドに寝転んでは、寝る前の一時(ひととき)(いや)しに、なろう読んでたオレが、だぜ?


そりゃーもう、マジか!?あれってマジであるんだー!?とか、オレってラッキー!!とか、みんなに教えてやりてぇ!ってなるやん?


そんな興奮状態のオレではあるが、当初、なろう読者ではなかった。まあ、誰しも最初はそうだろう。そもそもオレはなろうをはじめ、小説を無料で読めるサイトが存在していることすら、知らなかった。まあ、(すで)に漫画やアニメ、そしてゲームをこよなく愛するオタクではあったが。


オレがなろうの存在を知ったのは、つい、5、6年前のことだった。そう、今の職場で働いている時だった。


オレの職場の後輩が、オレが彼と同じくオタクっ()があると知るや(いな)や、それまで以上にぐっと(なつ)いてきたんだ。残業やらでクタクタになってたオレは、息抜きと(いや)し欲しさにソイツにオススメを()いてみたんだ。


『ハーッ。最近、なんか急がし過ぎて、こう、夢中になれるモンがないんだよなぁ。お前、なんか最近ハマってるモンある?』


ソイツは新卒だったんで、オレとは世代が違う連中の間で、何が流行(はや)りなのか、(たず)ねてみたんだ。


『ハヤト先輩!だったらなろうがオススメですよ!無料でいろんな小説が読めるし、なによりすっごく面白いんですよ!』


その時は、オレ、あ、ふぅん、そう?的に興味なかったんだけど、その(あと)、だいぶ()ってから連休もらったんで、何気に暇潰(ひまつぶ)しに(のぞ)いてみたらハマったってわけ。


だいたい似たようなストーリーで、世界観も似てはいるんだが、それはそれで独自性もあって、面白い部分もあったりするんだよな。


でもまあ、オレはハーレム系は大キライだったな。ちょいイチャぐらいなら許せるが、主人公がモテまくり要素とか、エロ要素とか、ぜんっぜん()らんちゅぅねん!そんなん読みたかったらダイレクトにエロ漫画読むわ、オレ!ファンタジー小説ならストーリーで魅せろっちゅーねん!


・・・ふぅーっ。


オレはゲームでもそうだが、サバイバルでいろんなモンを自作する作品が好きだった。それでもほとんどの作品がチート能力で、チャチャッと、すっげぇー物を簡単に作っちゃう作品ばっかだったけどな。それはそれでどうなん?って思いはしたが。


それでも、根がオタクなオレは、それ以来、結構いろんな作品を読んで、なろう色に染まっていった。そして異世界転生や異世界転移に、現実にはあり得ないと分かっちゃいたが、どこかしら憧れというか、生きていくために、馬車馬の(ごと)く働いて、すっかり余裕を失くしてしまった、現実社会からの『逃げ』を求めるようになっていった。


だから、今、このオレの状況が、例え夢や痴呆が見せる幻であったとしても、ほんの一瞬でもいいから、異世界転移であって欲しいって気持ちが勝ったんだ。だって、マジもんだったら超ラッキーじゃん?


それにいつまでもそんな答えの出ないことを悩んでなどいられない。オレはまず今、ソッコーでやらなければならないことがあるからだ。


前を隠す!


それが、まずオレがやるべきことっしょ?オレ、今、マッパなんよ?マッパで服着(ふくき)る以外に、優先すべきことってある?え?風呂に入れって?いやいや、風呂入ってもその(あと)、身体を()くモンねぇし。夏であっても風邪ひくっつぅの!オレ、デリケートな体質なんよぉ。


っつぅか、オレの服!どこよ?なんでオレ、マッパなん?


辺りを見回して服を探すオレ。だがオレの服らしきものは全然見当たらない。それどころか、人工物らしき物は痕跡(こんせき)すら見当たらない。オレは困惑した。異世界転移なら、神様は普通、服ぐらいは付けてくれるもんじゃね?なんでマッパなん?と。


だが、無いものは仕方がない。ここが異世界であろうと、そうでなかろうと、どちらにしろ、オレはまずこのマッパをどうにかしなければならない。


助けを求めて人の姿を探そうにも、こんなマッパなおっさんが、異世界だろうと、オレが元いたあの世界だろうと、突然現れたら、そりゃあ、変態以外の何者でもない。


オレは、なろう読者だったからだろう。やけに冷静だった。


まあ、ほとんどの作品は、着た服そのままで転移したり、異世界の服を着た状態だったり、転生だったら、だいたいが赤ん坊スタートからだし、他の家庭に生まれてて、ある程度の年齢で、すでに服を着てたりする状態からのスタートが普通だ。裸からスタートってこの状態からの(ほう)が珍しいぞ?


オレはこんな状況下で贅沢(ぜいたく)は言わない。全身とまではいかなくても、せめて最低でも、アマゾンの原住民のように、前だけは隠したい。最悪、異世界でなかった場合、暑くて小川で泳いでたら、服を流してしまったとか、泳いでいる位置からだいぶ流されて、服を脱いだ位置が分からなくなってしまった、ぐらいでごまかせるだろう。


そうなるとマッパでもいいかもしれないが、マッパだと変態だと思われて、話を聞いてもらうこともできず、逃げられてしまうだろう。いや、前だけでも逃げられてしまうかもしれないが。オレだって突然目の前に裸のおっさんが現れたら、即座に逃げるだろうしな。だから逃げる人の気持ちは十分理解できるぞ、うん。


たぶん、裸の女性が現れてもめっちゃビビるだろうな。痴女!?頭おかしい人?ってな。でももし裸のチビッ子が現れたら、ん?キミ、どっかで家庭用ビニールプールにでも入ってて、飛び出してきたん?お母さんは?って思うがな。


ま、そんなこたぁ、どうでもいいが。


とにもかくにも、今、オレはめちゃくちゃ恥ずかしいことには変わりない。


というわけで、最低でも前だけ隠すもの、可能であればパンツレベルまでの物を、葉っぱであろうが、木の皮でもいいから、とりあえずどうにかしたい。あ、オレの親からはパンツっていうと、トランクスとかあっちの(ほう)をイメージするから、ズボンって言えって、よく言われるんだが、オレの世代的にはパンツだよな?


ま、というわけで、とりあえず、木の皮が()がれかけているわけもなく、落ちているわけもないし、剥がせるわけでもないので、結局のところは葉っぱになる。出来たら大きな葉っぱがいい。昔、遠足で行った植物園で見た、バナナの葉ぐらいのデカさがあればいい。


オレはチラリとあの花ビラ連中を見たが、やはり無理そうだった。ちょうどいい大きさなんだがな、あの花ビラ。だが、あいつらからもぎ取れそうもない。相変わらずオレを追って、あちこち(かお)を動かすんが怖いんだが?


オレは周囲をキョロキョロ見回す。結構、アマゾンの密林かのように、いろんな植物が生えているんだが、なんかあの花ビラのように、不気味な圧を感じるんだ。まさか、だよな?


オレは近くに生えていた木々の一本に目星を付けた。やっぱり見たことない植物だ。その幹は、オレが両腕を回してやっとというぐらい太い。その枝から垂れ下がっている葉がバナナの葉ほど大きかったのだ。


オレは恐る恐るその木に近づこうとした。あ、当然ながら裸足だったことに、そこで気が付いた。靴もどうにかしないとな。だが、まず、オレは靴よりも前を取る!


気持ちの悪い地面の触感を我慢しながら、ああ、どうか虫踏んでませんようにと祈りながら、目的の木へと近づく。そうして少し背伸びをしてその葉へと手を伸ばす。やっぱり恐る恐る。あんな食人植物がいるんだ。その辺りの木や草も疑ってかかるべきだろう?


オレは葉先を恐る恐る、慎重に掴んだ。(なん)ともない。オレはホッとして、その葉先を軽く下に引っ張った。


ブチッ。


あ、あっさり千切れてしまったな。予想以上に()は、薄く柔らかいようだ。2度、3度試してみたが、やはりすぐに千切れてしまう。残念なことに、他に手が届きそうな葉はないし、ここまで葉が大きな木や草は見当たらなかった。


少し付近を歩けば見つかるかもしれないが、オレは一刻も早く、パンツがほしかった。


それにここまでくれば、この木が食人植物ではなく、単なる植物だと確信したオレは、しょうがないので、木に上って葉を、その根本からねじ切ることにした。


マッパで木のぼりって、何の罰ゲームだよ・・・。

【作者より】




【更新履歴】


2023.10.17 Tues. 20:29 読み上げアプリ修正(句読点・ルビ位置修正)

2023. 9. 3 Sun. 10:11 加筆・矛盾修正等

2021. 8.23 Mon. 12:06 初投稿

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ