第1話:俺と彼女
俺の名前は
「ひろあき」
半年前まで人間の形をしていた
今は 身体の一部が
小さな壷の中に入っているが そこに魂は存在しない
俺の魂は彼女の中
彼女の中で生きている
俺には嫁とガキがいたが
俺は奴らに殺された
家族と言う名の大義名分のもと
奴らは俺に依存した
奴らは俺を束縛した
奴らは俺に干渉した
そして…
奴らは俺をさんざん利用して
俺の身体は骨だけにされた
たがしかし
奴らは勘違いしてやがる
骨の壷を持ってるから
仏壇に位牌があるんだから俺の魂はそこにあるんだとめでたい勘違いしてやがる
俺には嫁とガキがいたが
大切な彼女の存在があった
彼女と過ごした800日間
人生最後の800日間
いっぱい会話して
いっぱい笑った
時には喧嘩もしたけれど
お互い納得いくまで会話したから
再び仲直りできたんだ
俺達いっぱい会話した
彼女と付き合って会話して俺の視界が広がった
空に色があるように
風にも色があるって事
人の心には音があり
お互い共鳴しあい奏であい美しい調べになるって事
彼女と付き合って
彼女と会話して
彼女を愛して
初めて知った
こんな形になったけど
今でも彼女を愛してる
声は出なくなったけど
今でも彼女と会話している
決して誰にも聞こえないが俺達二人は会話している
魂で会話してるんだ