九事故
ゆりは小学校時代の友人と会い、お茶をしていた。
会話も弾み、二人は楽しい時間を過ごせた。
だが帰りの時間、ゆりの友人はこぶしをぎゅっと握っていた。
(鈴香に話すなんて、できないよ。今度こそ何されるかたまったもんじゃないよ!)
この女は鈴香に問い詰められていたあの女だった。
そして今、ゆりの職場を聞き出せた。しかし、話す気にはなれなかった。
だからごまかすことにした。なるべく、長く・・・。
そしてこの同級生が白状するまで十年ほどかかった。
(急がないと。)
ゆりが道を走っている。
彼女は今年で二十二歳。自分が働く宿、安らぎの家で働くのも慣れた。何より、楽しかった。
そしてゆりは横断歩道に差し掛かった。信号はない。
そこで、ゆりは事故に遭った。
病院に運ばれたものの、ゆりは死んでしまった。
眼を開けると、ゆりはすっかり動けるようになっている。
ところが、目の前に動かない自分と泣きじゃくる両親を見つけると驚いた。
(嘘!私!?もしかして私、死んじゃったの…?)
だんだんとあたりが暗くなる。
見ると、両親が誰かと話している。医者だろうか?
意識が遠のく。
「ええ・・・子・・・事・・・も・・・あ・・・。」
次の瞬間、ゆりは知らないところにいた。周りが明るくなる。
「うふふ・・・あなた、すごいことをしましたね。」
そこにはこれまた知らない人がいる。
「私は閻魔。死人を裁く者。」
「え、閻魔!?」
ゆりは驚いた。
「そうです。そしてあなたは裁く必要がないと判断しました。あなたはとても良いことをしたので。」
「なんですか。その良い事って。」
「それは自分で見つけるものです。記憶がない可能性もありますが。」
閻魔が笑う。
「さて、あなたはどこにとどまります?」
そして二人は話し合い、ゆりは地上で暮らすことになった。閻魔が細かい手続きのようなものを済ませてくれた。
「あなたは良いことをしたのでまわりと違い人型です。では、さようなら。」
そしてゆりは地上で、優子という友達を作り毎日を楽しく過ごすことになった。
十年後。ゆりの友達からようやく情報を聞き出した鈴香が宿にやってきたが、ゆりはいなかった。
嘘じゃない!鈴香は腹を立てた。
しかし、そんな鈴香を、ゆりはしっかり見ていた。
見えないだけで鈴香の敵はしっかり横で苦笑いをしていたのだ。