五ニ番目の少女
今日は新学期。鈴香はわくわくした。
なんせ今年はクラス替えがあるからだ。五年生になる鈴香にはまだ同じクラスになったことがない人もいる。
新しい教室は前の教室と造りは変わらないが、とても新鮮に見えた。
そして一時間目の集会が終わり、二時間目が始まった。
まずは教科書が配られた。鈴香は丁寧に記名した。彼女はいつも優等生でいられるように努力している。次は自己紹介だ。自分の自己紹介を済ませた鈴香はある少女に目を付けた。
名は石水ゆり。大人しそうだが、みんなに囲まれて自分の自己紹介の感想を聞いている。
そして数日、ゆりが優等生であることはすぐわかった。
字は綺麗、授業で当てられても正確な答えを言い当てる。
服装もいたってシンプル。口数が多いわけじゃない。
なのに、みんなに囲まれる。
そして、鈴香のもとには誰も来ない。自分は二番目になってしまったのだ。
だから、鈴香はゆりの悪いところを探すことにした。が、なかなか見つからない。
そしてとうとう、自分が優等生だとわかっていてぶりっ子をしているのだと思い込むようになってしまった。
そんなある日。鈴香はゆりが道端で何かをしているのを見つけた。見ると、カタツムリをつかんでいる。
「そんなところにいたら、踏まれちゃうよ。」
ゆりはカタツムリを端っこに運んでいたのだ。
その時、鈴香はカタツムリを踏みつぶしたい気持ちになった。何よあいつ!いい子ぶっちゃって!
翌日、鈴香はゆりをぶりっ子だのいい子ぶってるだのさんざん文句を言ってやった。
これでいいのだ。
クラスのみんなは標的にされたくないようで、ゆりのもとから離れてしまった。
そんな日々は何日も続く。しかし、いくらたっても二番目のままの鈴香のいじめはエスカレートしていった。
そのまま卒業の日は近づく。
今日は始業式。ゆりは五年生になる。
今年はクラス替えをするので少し寂しいが、幸い仲の良い友達は同じクラスのようだ。
教室に入るとみんな、「おはよう!久し振りだね。」と声をかけてくれた。
目立つようなこともないのに、なぜみんな私に寄ってきてくれるのだろう。みんなは、ゆりは優しいしかわいいし頭もいいからね、威張ったりもしないじゃん、と言っている。
その日は教科書が配られたり自己紹介をしたりで下校時刻になった。
それから数日、特に目立つようなこともなく過ぎていった。
そしてある日のこと、ゆりは道の真ん中で動くカタツムリを見つけた。
「危ないよー。」
そう呟いてゆりはカタツムリを端っこに運んだ。
・・・視線を感じる。
その日からゆりは同じクラスの鈴香に悪口を言われるようになった。
いじめられたくないのか、みんなゆりから離れて行ってしまった。
そしていじめは激しさを増していった。
ノートがぐちゃぐちゃになっていた。本が破れている。
正直許しがたかったが、だれも助けてくれない。
しかし、六年生ももう半分といったところで、いじめは収まった。友達は戻ってこなかったが。
まあ別にいいだろう。遊んだりして勉強ができなくなったりしてはいけない。
ゆりも、鈴香も、受験をするのだ。