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四幽霊の不可能

幽霊に不可能はない、それは確かだ。だが一つ不可能があるのも事実だ。

それは、生命を傷つけること。動物も、人間も、植物もだ。殺したりしようとしたら、体が固まって動けなくなる。でも、そんなことする幽霊はごく一部なのだ。

そしてある日のことだった。この田舎町、安楽町に来訪者が来たのは。

(・・・?)

ゆりはゆったりとしたワンピースをまとい、スーツケースを転がしている人を見つけた。

「あら懐かしい。お客様だわ。」

優子が手を振る。見えてないけど。

「わ、私あの人を見たことあるかも。」

ゆりはなにを思ったか宙に浮かび上がりその女を追いかけ始めた。

「あ、ゆりー!」

優子もあわてて後を追う。


そしてその女性は宿屋の前で止まった。安らぎの家と書かれている。

「この宿は、私が働いてた・・・。」

ゆりは口をあんぐり開けた。

その間に女性は宿に入る。そしてチェックインを済ませた。

記名された名前を見てゆりは声を上げずにいられなかった。

「桜里鈴香。・・・信じられない。こいつは、私の小学校のクラスメイトよ!」

まさしくその女は、ちょっとした洋風のお屋敷に住む少女だった。まさかこの女がこんな田舎に来るなんて!

鈴香はやたらきょろきょろしながら指定された部屋に入った。

・・・彼女は荷物を置いてカバンから何かを出し、笑みを浮かべた。

「あれ、お料理の包丁じゃない?あの人、料理するのかしら。」

優子がつぶやく。

「いや、あれ包丁じゃないよ。ばたなふってやつ!」

小さな女の子の霊が言った。彼女もまたとても良いことをしたので、人の形だ。

ちなみに、親より早く亡くなったら石をつまされると聞いた人もいるかも知れない。だが、それは二十歳未満の場合だ。確かに親の子供ではあるが、年齢的には子供ではないのだ。

この七歳の小さな子供は、とても良いこと(貧血で倒れた母親のために小さいのに近所の人に一人で助けを求めたこと)をしたので石をつまずにすんだ。

(ばたなふ・・・バターナイフのことか?)

ゆりは心の中で苦笑しながらこう言った。

「えーっと、あれはカッターナイフだと思うよ。」

「あ、言われてみれば。」

幽霊はもう死なないのでカッターナイフなど怖くない。

にしても、何に使うのだろう?そして、なぜあの女がこんなところまで?

考え込んでいるうちに鈴香はナイフをポケットに入れ、部屋を後にした。

廊下をぶらぶら歩きまわっている鈴香を、幽霊たちは追いかけた。

彼女はさっきと同じようにきょろきょろ見渡しながら歩いていた。

そして、彼女の表情には変化が現れた。

最初はにっこり笑っていた顔が、きょとんとした顔になり、最後は焦りだした。

結局鈴香は部屋に戻ってしまった。目的はわからないままだ。

すると、部屋から声が聞こえた。

「く・・・あ、つ・・・ゆりめ・・・。」

「!!」

ゆりには、ゆりめ、という言葉がはっきりと聞こえた。

「ちょっとここから逃げたい。」

ゆりは驚いたような、怒っているようなひきつった顔をして言った。

そしてみんなは逃げだした。


「はあ、はあ。」

「ねえあれ、絶対ゆりねーちゃん狙われてるよお!」

女の子が言った。

「そうかもねえ。」

優子がうなずく。残念だが本当に狙われているようだ。

でも、なんで?

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