一プロローグ
私の名は、ゆりと言います。
地上で暮らしていますが、実は死んでいるんです。
私は幽霊としては珍しい人型。たいていの幽霊は白くて丸っこい、ふよふよした感じです。
幽霊が人型、動物だと犬型などの姿を取るのは、生前でとても良い行いをしたものだけ。でも私は、自分が生前にしたことの何がとても良い事だったのか、わかりません。記憶がないわけではないのですが、特に目立つようなことをしたこともなかったのです。
霊は死後、地獄の入り口まで行って閻魔の裁きを受けます。そして有罪と無罪に分けられるのです。
有罪だった霊が行くのはただ一つ、地獄です。そこでは閻魔によって人型を取らされます。
無罪だった霊は天国に行くか、地上にとどまるか、生まれ変わるかを選択します。
私は生まれ変わってもいいと思えるほど長く生きていないし、天国に行くような資格はないと思ったから地上で暮らしています(今人型でいる以上良いことはしたっぽいが)。ちなみに天国でも人型を取れるので、ふよふよした霊がいるのは地上だけですね。
私の種は浮遊霊。でも浮遊霊なのに自分が死んだことを理解しているので、本当なのか定かじゃない。
実は幽霊にも家はあるんですよ。人には見えないけど。私の家は大半が和風。
今の時代和風な家なんてほとんどありませんね。なのにどうして和にしたのかって?
それは生前私をからかってきた女子がちょっとした洋風なお屋敷に住んでいたからかもしれません。
本当にその家、洋中の洋って感じでして・・・。
こんな私にも友達がいます。名前は優子。彼女は騒霊です。いわゆるポルターガイストですね。
彼女も人型です。優子がした良いことは、中学生のころにいじめられていた女の子を助けたこと。
みんな助けたらいじめられると思っていたようで、見ているだけでした。
でも、優子は助けに行ったのです。標的にされそうになったそうですが、調子に乗るなと叫んだらいじめっ子はにげていったそうです。
優子はこのことが自分のした良いことだと自分で気づいたそうです。リーダーに確認したら本当だったとか。
優子の正義心が女の子を救ったのです。でも、優子にはおしゃべり好きな一面もあります。
ちなみに優子は三十四歳の時に来てから十三年だから四十七歳。しかし幽霊は不老です。
私は二十二歳。ここにきてちょうど十年なので三十二歳。小柄なのでよくかわいいといわれます。
私たちはのびのびと暮らしている。これはそんな私たちの物語・・・。