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第87話 TO-FU(1)

 白くてプルプル、口溶けは柔らかでほのかな甘さが口いっぱいに広がる魔法の食べ物はトーフと言う。

 うちの女たちは皆、最近これにはまり込んでいる。

 問題は俺たちではどうしたって作れないってことだ。


「お醤油派ですか?! それともお塩ですかっ!」


 ウツタの圧に負けて俺は塩を選択する。


「えぇ〜! 極東ではお醤油と薬味で食べると決まっているのです!」


 ハクのブーイングで俺は醤油を手にする。じっと俺を眺めるウツタ。そしてハク。


「もーらいっ」


 まるで麺でもすするようにクシナダが俺の豆腐を吸い取った。


「あぁ、それ最後の一つだったのに〜」


 リアが残念とばかりに言ったが、それ……俺の朝飯だぞ。


「トーフ。どうしてつくれないんですかっ!」


 バシバシとウツタがテーブルを叩いた。

 豆腐はすごく手間のかかる食べ物だ。親父の話では豆を絞った汁を特殊な調味料で固める。それを型に入れて……なんだっけ?

 とにかく手間と時間のかかる食べ物なのだ。


「手間がかかるし難しいんだよ、俺もよく知らない」


 ウツタが口を尖らせた。

 彼女はこの豆腐を使った暖かいミソスープが大好きなのだ。ウツタは普段から大人しくてとても静かな女性だが、今回ばかりは断固とばかりに主張をしてくる。


「かなしい」


 ひゅうと冷たい風が吹き、俺たちは震え上がる。


「ちょ、ウツタ! 寒いって、寒いって」


 ウツタが悲しむと彼女の周りを恐ろしく冷たい冷気が漂う。暖炉の火は小さくなり、暖かいスープはすぐに冷えてしまう。


「フィオーネ! 頼む!」


「はいっ!」


 フィオーネはウツタを抱き上げると温泉の方へ走って行った。その後あの2人はあられも……いや、普通に温泉に入る。あまりの恥ずかしさにウツタは悲しみを忘れ冷気を放たなくなるのだ。


「なぁハク、お前の知り合いにトーフ屋いたりするか?」


「はい」


「そうだよな……そんな都合よく」


「いますよ」


「いるの?!」


 サングリエがトーフにはちみつをかけて食べ始めた。甘くて美味しいのに太らないから女の子の味方なんだと。


「じゃ、じゃあその人紹介してくれないか? トーフ。くろねこ亭で作れるようになったらみんなも嬉しい……だろ?」


 元気よく返事をした女たちに俺は若干めんどくささを感じながらスケジュールを組み立てる。

 ギルドでの寄生虫事件以来、鑑定士への目が再び厳しくなってしまった。無論、仕方のないことではあるが風当たりが強いというのは居心地がいいものではない。

 

「ギルドに行かなくて済むなら……いくか」


「私も行く。果樹園の方の手入れはまだ必要ないし、それにくろねこ亭で手が空いてるのは私でしょ? ねっ?」


 サングリエの申し出を受け入れて、俺はハクとシューに声をかけた。

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