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第82話 開園!俺の果樹園(4)

 疲労したシューを抱えて、俺たちは極東を後にした。ヒミコが恐ろしいとは聞いていたが本当に恐ろしい人だった。

 あの人に目を見られると固まって何もできなくなる……そんな雰囲気の人だった。


「ヒメたちは不思議だとは思ってたけどまさかお狐様だったとはにゃ」


 ほんとその通りだ。

 その狐ってのが魔物なのかは微妙なところだが、ヒメたちは人ではないものの血を継いでいることになる。

 

「シュー、大丈夫か。帰ったらたらふく食えよ」


「にゃー」


 農場へ向かって歩く。リアがいるから木の植え方は知っているはず。つまりは果樹園ができあがってるはずだ。

 こっちじゃもう朝か。

 朝日が眩しいのかシューは俺の胸にぐりぐりと頭を押し付けて眠ってしまった。少し軽くなったか、毛並みもよくない。


「おぉっ」


 俺は思わず声を上げてしまった。

 牧場の奥には色とりどりの果実を身につけた木々が立ち並び甘い香りを放っている。朝露をまとった果実はとても美味しそうで腹がなった。


「おかえりなさい。果樹園、ソルトがいない間にさくっとできてるわよ」


 サングリエがパジャマ姿のまま管理小屋から出てきた。


「こっちは大変だったぜ」


「でもどうせ解決してきたんでしょ」


「いいや、ヤバそうな展開になってるだけだ」


 ツクヨミの失踪、黒幕疑惑。そしてイザナミ暗殺計画にワカヒメ陣営の失脚。恐ろしさを感じながら俺は確認しなければならないことがあった。

 そのためにはサングリエの力が必要だ。


「みんなで朝食をとったら付き合ってくれるか?」


「なにに?」


「鍛冶屋」


 不思議そうな顔をしているサングリエに事情は離さずに俺は家へと戻った。暖炉に火をくべて、シューをソファーへと寝かせる。寝息を立てる黒猫は少し痩せている。


 鶏肉のミルク煮かな。

 帰り道、市場で買った鶏肉を食べやすく切って、そうだパンにするかコメにするか。

 コメを柔らかくしてやろうか。


「おはよう、ソルトお兄ちゃん」


「クシナダ、早起きだな」


「うん、今日は研究部だし……それに果実の収穫があるでしょ?」


 クシナダは少し賢くなったか?

 いやかなり賢くなったな。


「ありがと、シューはちょっと疲れてるんだ。そっとしてやってくれ」


 クシナダは静かに頷くと外へと向かった。温泉の方で顔でも洗ってくるんだろう。俺もさっさと終わらせて温泉に浸かりたい。

 コトコトと鍋の中が音を立て始める。香草はシュー好みのブレンドでいい香りがする。

 釜の中に仕込まれたパンの生地を見るに、リアたちはパンを食べるようだしスープでも仕込むか。


「おはよー、ソルトさん。どうでした? 極東の方は」


***


「おっ、別に悪いこたぁしてねぇって」


 鍛冶屋の男は俺の顔を見た途端に苦笑いした。そりゃそうだ。


「違う違う、今日はお前に協力を頼みたいだけだ」


「大丈夫ですよ、ちょっと教えて欲しいことがあって」


 サングリエがにっこりと微笑んで距離を詰める。サングリエの可愛さに鍛冶屋の男は気を許してしまう。


「そうそう、もう少し鼻筋が通っててそんで瞳はもっとでかいかな」


 鍛冶屋の男は楽しそうに話している。

 サングリエは似顔絵を描きながら男の話を聞くとかいう器用なことを遣って退けているが、俺としてはさっさと終わらせたかった。

 この似顔絵を極東へ持って行き確認したいのだ。


「おぉ、すげぇなそっくりだ。こいつだよ、こいつ!」


 その後俺は何人かの鍛冶屋を周り似顔絵が似ているかどうかを確認し、極東へ向かった。

 シューがいないことに不満げなイザナミを差し置いて、俺は似顔絵を皆に見せた。


「これは……」


「ツクヨミ様の家臣にこのような方がいらっしゃいますか? 彼は先日の事件の主犯とされている男の1人です」


 イザナギが俺から似顔絵を取り上げて静かに言った。


「これは我が息子、ツクヨミだ。」


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