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第65話 猫だって温泉が好き!(2)


 雇った大工と、イザナミが極東から連れて来た大工があれやこれや話し合いをしながら工事を開始した。極東の植物や木材をふんだんに使っているのできっと極上の温泉ができるはずだ。


 問題は……


「うふふ、これは主人へのおみあげにしましょう。あっ、ゾーイさん。これの材料を社の庭で栽培したいの。教えてくれる?」


 ゾーイは「はい」と苦笑いをして沼花のタネをいくつかポケットに入れた。

 彼女はソラ昏睡事件以来、俺たちの仲間だというだけで気に入られ、イザナミに呼び出されては質問攻めにされているらしい。


「それからそれから……あいすくりーむでしょう。ちーずとやらもとても好みだったし……だってだって、献上されるものよりもはるかに美味だったのよ?」


 イザナミはとってもおっとりした可愛らしい人だが、もう少し自分の身分を考えてほしい。

 イザナミの膝の上に座っているシューが呆れたような顔で尻尾を振った。


「いやじゃ! いやじゃ! ヒメはここでお泊まりするんじゃ! 朝のみるくをのむんじゃ!」


 ソラが必死にヒメを説得している。

 その横でリアが荷物を片付けている。


「そうそうにおかえりいただいて、温泉施設が完成後ギルドが正式にお招きしますので」


 ミーナが堅苦しい挨拶をした後に極東のわがまま姫たちをなだめた。

 こういう時、この人は本当に頼りになる。


「ねぇソルト殿。ここの農場と我が社をポートで繋ぐのはどうでしょう? 常にシノビや侍がいれば私たちも安心して訪問できますでしょう?」


 本当、勘弁してください。

 

「イザナミさん、正式にお招きするまでは危険ですよ」


 俺の苦笑いにイザナミは口を尖らせた。極東の人は幼く見えるが、本当に俺と同じ年なんじゃないかと思うほど幼い。

 それどころか、無邪気で無垢な彼女は年下にさえ見えるほどだ。


「極東の大工さんたちのご協力、のちにお礼をギルドからさせていただきます」


 ミーナの言葉にイザナミはにっこりと微笑む。

 うーん、嫌な予感。


「いいのですよ。今後とも、この農場にはお世話になろうと思っていますもの」


 やっぱり……。

 極東の王族ならもっとすごい温泉施設を持ってるだろ……?

 なーんで俺の農場に執着するんだよ、全く。


「仕方ないの。ソラがそこまでいうならヒメもイザナミ様と一緒に帰るのじゃ」


「シューちゃん。またもふもふしましょうね」


「にゃお」


 シューは勘弁してくれとばかりに鳴いた。イザナミには伝わっていないようだが。


***


「温泉だ〜!」


 家の女たちが一斉に露天に飛び込む音が聞こえた。極東の植物「竹」で仕切られた向こうはきっと楽園である。

 こっちは俺とボルケノだけである。石鹸石と噴射草がセットになっている洗い場はささっと体や頭を綺麗にすることができ、露天風呂……といっても覗きができないようにしっかり壁が作られている。


「あぁ〜、いい湯だ」


 俺は湯の中で腰掛けて、ヒノキの香りと温泉に酔いしれる。

 ここの極東のサケを持って来て飲むと、多分本気で極楽にいけるだろう。


「リアって意外と大きいのにゃ。色気ないのに……」


「うるさいわねっ、シューさんは魔物じゃないっ」


「シャーッ!」


「あったかくてとろけそうですぅ〜」


「フィオーネおねーちゃーん! 洗って〜!」


 楽しそうだなぁ。女湯。

 ちなみに声はしないが、ミーナとネルも入っているはずだ。落ち着いた大人の女性は静かに湯を嗜むのか。そっちの方がいいな。


 いや……なんか静かすぎないか?

 あいつらが静かなときはくだらないことを企んでいるときだ。

 俺はまさかと思いながら、女湯と男湯を仕切っている大きな壁を見上げた。


「おまえらっ!」


 思わず局部を手で覆い隠し、俺は背を向けた。

 男湯を覗き込む女たちの顔、しかも全員。


「覗くんじゃねぇよ!」


「いいじゃないですか! 減るもんじゃなし!」


 フィオーネ、それは男のセリフだ。


「ほらにゃ? ソルトは意外といい体してるにゃぁ」


「シューさんばっかりずるい! 私が一番弟子なのに!」


 あー……やっぱ屋根つけときゃよかった。

 これじゃゆっくり風呂にも入れない。


「シュー、ミルク抜きにするぞ」


「にゃにゃっ! みんなおりるにゃっ」


 のんびり、とはいかなかったものの念願の風呂を手に入れた俺たちの生活水準がぐっと上がったはずだ。

 明日からはいい風呂浴びれるように仕事も頑張ってみるか。

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