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第55話 和洋折衷(1)


「あまーい、あんこにあいすくりーむが乗った極東あいすはいかが〜」


 ゾーイの元気な声が店内に響く。アズキの栽培に成功した俺たちはヒメたちに習って「あんこ」なるものの生産を始めた。

 甘く煮て潰すだけ……なのにあの豆がこんなにも風味豊かになるのだ。


「ゾーイちゃん! 持ち帰り用であんころもちを40個頼むよ」


 戦士風の男がゾーイに声をかけた。

 最近、冒険者の客が増えている……というのも、


「あのギルドでの毒物騒ぎ、ゾーイちゃんの処置がなかったら毒が早く回って死んでいたよ」

「ゾーイちゃんのおかげて俺も役に立てたんだ」

「魔術師の私が人命救助の役に立てるなんて思ってもみなかったわ」


 あの事件で現場の指揮をとった彼女の評判が爆上がりしているのだ。

 無論、ヒメたちが連れて着た極東の医師たちが到着するまでの間だったが、毒が回らないように最適な処置を施したおかげで多くの冒険者が助かり、その後解毒薬の投与も的確かつ迅速だった。


「はい、おまたせ」


 男はあんころもちを受け取ったが、どちらかといえばゾーイにご執心なようで。


「あんな才能の塊がギルド追放だなんて……功績に応じて緩和してあげるべきだな」


 そんな声まで上がるほどだ。


「ソルトさーん! おこめが足りないからフィオーネさんに運ばせてくれる?」


 リアの要望に俺は片手で答えると農場へと向かう。暇つぶしの散歩がてら寄って見たものの、くろねこ亭は大繁盛だ。


「次は……酒用の果実を栽培する果樹園。かなぁ」


 フウタがいない今、うちの農場は圧倒的人手不足。猫でもネズミでもなんでもいいから手が借りたいくらいだ。

 拝借したイモイモ焼きをかじりため息をつく。


「心苦しいが……いや、心より俺たちの体力が苦しいが……、本人のためだもんなぁ」


 俺はポケットからチラシを取り出した。これは今朝、ミーナからこっそり渡されたものである。

 なんでもあのエルフの医師部長が俺に褒美として与える……と言って来たらしい。

 信用していいのか? 新しい医師部を。


***


「美味じゃのぉ、美味じゃのぉ」


 ヒメが暖炉の前に正座して「ましゅまろ」というお菓子を炙って食っていた。あいも変わらず王族がうちにひょっこりと現れる。


「びみじゃの、びみじゃの」


 ヒメの真似っこをするクシナダは大きな口でましゅまろを飲み込んだ。


「あっ、ヒメ様。私にも一口……あっ、あついっ」


 悲鳴をあげたうっちゃんことウツタは悲しそうに眉を下げた。ヒメはどうやら雪魔女が好きではないらしい。

 すみませんね。とソラが新しいましゅまろをウツタに渡した。


「今日は、みんなに聞いてもらいたい話があって集まってもらった」


 ピリリと空気が緊張感に包まれる。


「ゾーイ、お前にはしばらくの間極東へ行ってもらう」


「え、えーっ!」


 リアとゾーイが同じリアクションをとった。

 ヒメがドヤ顔で俺の横に立つ。丸い眉をヒクヒクと動かして説明を始めた。

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