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第39話 異世界からきた戦士(1)


「十中八九、これでしょうね」


 ミーナはメモを広げて言った。

 突如として現れた異世界からの最強戦士タケル。消息不明となっていたが、とある迷宮捜索人が発見した。

 タケルは憔悴状態だったが、彼の召喚に関わった国王がタケルを専属の戦士として欲した。


 そして、タケルの治療を請け負ったのは《《リッケルマン家》》。


「つまり……タケルの妻にするために奪い返しにきたってこと?」


「ええ、あの女……マリア・リッケルマンならやりかねないでしょう。国王の専属戦士の妻がリッケルマン家となればかなりの躍進ですからね」


 マリアは出来損ないの妹を傷つけた。容姿を傷つけるために襲わせてゾーイの足を奪った。

 それどころか勘当まで言いつけて突き放したくせに、力づくで取り戻しただと?


「うっ……鬼姫薔薇だ」


「目覚めましたか……」


 ミーナが心配そうな顔で俺の額の汗を拭った。


「鬼……姫薔薇の香りがあいつからした」


 俺の言葉に嫌な空気が病室の中に充満する。そう、タケルは操られていた。おそらく、ゾーイを殺しにきた連中と同じ鬼姫薔薇の実を使った洗脳薬だろう。


「でも、なぜタケルを操ろうと?」


「俺は、あのマリアって人を見誤っていたかもしれないです。あの人は咬ませ犬にされたんじゃなく……前回の事件の時から《《洗脳薬を依頼して手に入れた》》のでしょう」


 俺は前回の事件の際、マリアは謎の鑑定士と薬師によって咬ませ犬にされた一人だと思った。

 その理由は鬼姫薔薇の香水を彼女がつけていたから。

 犯人がわざわざ香水をつけてヒントを俺にくれてやる必要がないからだ。


「あの人は……わざと香水をつけていたのかも」


 恐ろしい女だ。気づかれないと思ったか、気づかれてもいいと思ったか。


「タケルを操って……自分の妹と結婚させ王族へ入ることを目論んでいる?」


 リアが眉間にしわを寄せた。


「ゾーイは……自ら彼について行った。命の危険がないのなら無理に連れ戻す必要はないでしょう」


 それがミーナの答えだった。


「少なからず、タケルさんのそばにいれば死ぬことはないでしょう。それに……王族に近しい貴族の称号が与えられれば彼女はきっと安泰です」


「ああ、そうですね」


 俺の返事に納得がいかないのがリアだった。


「なぜ、そう言い切れるの? あなたを刺したのよ? ゾーイだって……用済みになれば殺される。もしも、ゾーイはただの囮で本当はあのマリアって人がタケルと婚約することになっていたら? ゾーイを不慮の事故で殺して、代わりにマリアって人が……タケルを慰めるとか」


 なくもない話だがその理論はむちゃくちゃすぎる。

 なら最初からゾーイなど死んだことにしてあのマリアがタケルに取り入ればよかったのだ。


「それはないでしょう。マリア・リッケルマンは同じ医師家系と婚約を結んでいたはず。ゾーイはあくまでも彼女の政治のコマの一つ」


「私は絶対にゾーイを取り戻す。彼女を……あんなスケコマシのお嫁さんなんかに渡さない。ゾーイはソルトさんを絶対振り向かせるんだって言ってたんだもん!」


 え?

 それはちょっと、それはそれで困ります。


「リッケルマンですか……」


 ミーナは苦虫を噛み潰したような顔で俺を眺めている。


「シュー、フィオーネ、それから……ヒメさん。俺と一緒にダンジョンに入ってはくれませんか」


***


「よいのぉ、よいのぉ」


 ヒメはなんだか嬉しそうにスキップをした。

 ここは上級ダンジョン。俺たちは目覚め岩という岩に生えるコケを採集するためにやってきていた。

 目を閉じたままのフィオーネは道を遮る魔物どもをなぎ倒し、シューがそれを援護している。

 俺とヒメ、それから使者の女は後方から支援をし目覚め岩の場所を確認しながら足を進めている。


「怪我をしても心配するでないでございまする。ヒメは極東でも五本指に入る回復術師。治してさしあげまする」


 ヒメはウキウキである。


「はっ! やっ!」


 バサッと魔物が地に落ちた。大きな鳥形の魔物。少し希少なアイテムを取ってから俺は目覚めの岩が近いことを悟った。


「フィオーネ……気をつけろ。くるぞ!」


 ピュロロロという鳴き声とともに降り注いだ羽毛の雨に俺たちは襲われた。大人10人ほどはあろうかという大きな鳥が岩を守るようにして飛んでいた。


「いっくにゃあぁ!」


 どかんっ!

 空から降り注いだ稲妻が魔物を襲う。


「フィオーネいけぇぇ!」


 俺は体をかがめてフィオーネの踏み台になった。フィオーネは俺の背中を踏切台にして舞い上がる。剣を振り上げ、稲妻に痺れた魔物を切りつけた。

 フィオーネはシューの魔法によって目を閉じたまま無事着地し、あの大きなモンスターは谷底へと落ちていった。


「見事、見事」


 ヒメが俺の背中の痣に回復術をかけながら声をあげた。


「よし、コケを採集したらすぐにギルドへ戻ろう」


 タイムリミットは今日の夜まで。あとはシノビの力に任せる他ないが……


「うちの牧場管理人を取り戻す。ついでにあのバカ戦士を正気にもどしてやる」


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