第22話 牧場が欲しい!(1)
作物の収穫も安定して来た。俺の農場の植物は5倍の速さで成長するのだ。俺たち3人が暮らすには十分すぎる量である。
そして俺たちの生活を支えているのがコイツ、沼花である。沼花の果実で作るワインが大好評でいくつかの店に卸すことになり、仮池だけでは場所が足りずに農業用の水路でも栽培を始めるほどだ。綺麗な水があるおかげでなんとかなっているが、正直育成は手間がかかる。
水の上に咲く沼花に育成水を与えるのは至難の技だからだ。リアが担当しているがうまく行く時といかない場合もあって安定はしない。
「昨日の売り上げでちょうど10万ペクスか」
この土地を買ったのと同じ金額だ。ちょいちょいギルドでの依頼なんかもリアがこなしたおかげでうまいこと資金は集まった。俺たちがなんのためにこんなにも頑張って来たか……。
のんびり生活に鞭打って働いた、その目的は……
「お前たち。ミルクは飲みたいかー!」
「おー!」
フィオーネとシューが飛び跳ねる。
「お前たち、卵は育てたいかー!」
「おー!」
リアとフィオーネが拳を突き上げる。
「よし、まずは土地。次は道具と建物そして……」
「生き物!」
全員の声が揃った。ビバ! 憧れの牧場! 俺の農場ライフに欠かせない可愛いもふもふ動物たち。
半分は干し草用のライ麦畑にしようか。牧草も買って来て繁殖させないといけないな……。
いや、食べ物は牧草より穀物にするか?
「ソルト、さっさと貧民街の領地売りの店にいくにゃ」
シューがそわそわと足を動かす。新品の短いスカートが揺れ、目に毒である。金が稼げるようになってからコイツらの服が日々豪華になっているような、そんな気がしてならない。
ま、小遣いの中でやりくりしてるなら問題ないけどな。
「リアは大工たちに交渉に行ってくれ。これは設計図、どのくらいの予算か見積もりをもらって来てくれ」
リアは口紅を塗ってから家を飛び出した。
「わ、私は?」
フィオーネが口を尖らせる。
「お前は俺と来い。番犬探しだ」
「おばちゃんとの交渉は私かにゃ。任せろにゃ」
***
俺とフィオーネはギルド内の魔物ショップへ足を運んだ。益獣や愛玩用の魔物は近年高い人気を誇り、改良を重ねた猫又やコボルトなどは一般人も手にすることができる。
俺たちが探しているのは【番犬】となる犬型の魔物だ。
コボルトかクーシーか。
「コボルトなら2頭で500ペクス!」
檻に入れられた可愛い子犬。クーンと鼻を鳴らし、フィオーネのマントにすり寄っていた。
「ソルトさん! この子たちを飼いましょう!」
おお、なんと単純。さすが戦士。
でも、出会いは大事だというし……コイツらでいいか。
「はいよ」
店主に金を渡し、俺とフィオーネは一匹ずつコボルトの子犬を抱いた。ぺろぺろと顔を舐めてくる人懐っこさで番犬は務まるだろうか?
まあ、こんだけ可愛けりゃ……いっか。
「かわいいですねぇ、もふもふ」
フィオーネは子犬を抱きしめ見たこともないようなトロケ顔で言った。フィオーネの方が数倍可愛いがそれはおいといて。
農場の方へ戻るとすでにシューとリアが大工たちと何やら打ち合わせをしていた。なんたる早業……。
「もう買えたのか?」
シューは俺の声を聞くとギクッと体を震わせた。やましいことでもあるのか、わなわなと手と口を動かし何やら言い訳をしている。
大工たちはリアと設計図を見ている。その中に見慣れない人影が見えた。
風になびくふわふわの赤毛、豊かな胸を堅苦しい礼服で隠す彼女は優しい笑みを浮かべ、何やら大工たちに指示をしている。
「ミーナさん?」
「あら、どこへ行っていたのですか?ソルトさん」
彼女は満面の笑みで俺に言った。
「ああ……嫌な予感がする」
「何か、おっしゃいました?」
「なんでもありません」




