第一章:ロムルス地区魔術高校入学式
皆様、お久しぶりです。そして、申し訳ございません。前回からかなりの時間がたってしまいました。そのことに気づき、今日急いで書きました。本当に申し訳ございません。
さて、今回は入学式の風景です。出来るだけ魔術都市に関する情報を記しています。これからも追加情報を記そうと思っていますので、今回の物語で、魔術都市のことをもっと知りたくなってください。
春の日差しは暖かく、魔術都市で生活している人々を見守っているかのように、今日も優しく照らしている。その中で、小鳥たちが楽しそうにさえずり、人々には活気が溢れている。そして今日、ここ魔術都市のロムルス地区では今日、学校の入学式が行われようとしていた。
といっても、魔術都市に普通科は小学校までしか存在しない。そもそも魔術都市とは、とある昔の魔術師が魔術という技術を世界に永久的に遺すために、ヨーロッパの裏側の世界(即ち異次元)に設立した世界である。都市と言っても、ヨーロッパそのものの面積を有していて、10もの地区に分かれ、それぞれに支配者がいる。ここ、ロムルス地区はカウレスティス家という、魔術都市の中でも有力な魔術一族が支配している(実際は地区の防衛をしているだけで、魔術都市では珍しい民主主義方針を採っている)。
そして魔術都市の人口の約七割が魔術師で、彼らは魔術師のトップに立つために、日々魔術の研究をしている。そして、魔術を志す学生達も、中学と高校に通い、立派な魔術師になるべく、日々熱心に勉強している。
そして今日も、新しい魔術師見習いが、学校に入学する。
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「おーーい、キアラーーーー!早くしないと入学式に遅れるよーー!学校で最初に遅刻は嫌でしょーーー!」
「あと少しで行くから、待っててよー、シンディーーーー!」
二人の女子高校生が学校に行こうとしている。キアラという少女は金髪でミディアムヘア、そして左側に青いリボンをつけた美少女だ。そしてスタイルも、背は少し低いものの、胸が大きく、太ってはいないが豊満さを隠しきれていない。一方、シンディという少女は茶髪でセミロング、猫の髪留めで前髪を留めて、カチューシャをつけている。容姿は可愛く、キアラと違って準モデル体型だ。こんな少女達が入学するとなると、学校側も鼻が高いのだろうが、実際はそうでもないらしい。
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「それでねー、お姉ちゃんが『高校はもう遊び半分で魔術を習わない。戦場に立った状態で臨みなさい。最も、貴女に生き延びられるわけがないだろうけど。』って言ってたんだよ。いくらお父さんに期待されてるからって、あの言い草はないよ。」
「キアラのお姉さんって、アニータでしょ?アンタの双子の割に、性格が尖ってるし、そのくせ、自分よりも下の人間を侮辱するんでしょ?私、あんな人を魔術師だなんて言いたくないわ!」
「私もそう思うんだけど、お姉ちゃんは実力があるんだもん。そうならざるを得ないよ。それに、〈精神系〉が得意シンディや、〈攻撃系〉に長けたお姉ちゃんと違って、私には得意な魔術がないんだもん。」
「それは、キアラのお父さんが〈攻撃系〉と〈精神系〉と〈回復系〉以外教えないからでしょう?他の魔術だったらキアラに合うかもよ?」
「そんなこと言われても・・・」
彼女達の会話のとおり、魔術都市で評価されるのは魔術師としての実力のみだ。しかも、一重に魔術と言っても、彼女達が話していた魔術の種類の他に、〈錬金術〉、〈召喚術〉、〈物理学系〉、〈占星術〉、〈その他〉の魔術がある。そして魔術都市にはいろんな地区があり、それぞれの地区に相応しい魔術の種類を研究、実用化させ、魔術師のランクを上げることが必要だ。
ちなみに、ここロムルス地区では、統率者であるカウレスティス家が国家防衛を主としているため、〈攻撃系〉、〈精神系〉、〈回復系〉という、軍用魔術の三要素を主に学ばせている。そして、キアラという少女の家はフローレンス家という、軍用魔術の権化だ。カウレスティス家さえいなければ、その分野ではロムルス地区一位の実力を持つ。しかし、それでもカウレスティス家と一、二を争う一族なので、彼らを恐れる魔術師も多い。今回、魔術高校に入学する生徒の総代もフローレンス家出身(キアラの双子の姉)だ。それに比べキアラは軍用魔術の才能がなく、彼女を「欠陥品」と呼ぶ人も多い。
「大丈夫だよ。これから練習すればいいんだし。ほら、学校に遅れちゃうよ、キアラ!」
「分かったよ、シンディ。早く行こう!」
キアラにとって、シンディはかけがえのない親友だ。シンディがいなければ、キアラは精神を保てていなかっただろう。
キアラとシンディ、二人の駆ける姿は、何とも元気そうで、まさに今を生きる高校生を思わせている。
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「皆さん、入学おめでとうございます。私が、貴方達一年C組の担任になりました、エンリチェッタと申します。これから、よろしくお願いします。」
担任の女性、エンリチェッタが大人しさと爽やかさを表したように挨拶をする。そんなエンリチェッタの姿を見て、
「う、美しい・・・・!」
「こんな先生の元で魔術の修行が出来るんなら、俺は幸せだぜ。」
という、男子の声もしばしばあった。
「あの男子達、うるさいよねぇ。」
「仕方ないよ。あの先生、本当に魅力的だもん。私まで見とれそう・・・」
「そう?まあ、それもそうだね!」
キアラとシンディもこのクラスになったのか、エンリチェッタの話しをしている。しかし、男子達と違い、独り言ではなく、おしゃべりだ。恐らく、魔術師の伝統なのか、お互いの名を知らなければ他人と話さないのだろう。
「あ、ちなみに私も今日、教師になったばかりなので、皆さんと同じ、私も一年生ですね☆」
さらに放たれた、エンリチェッタの新事実。オォーーー!!と、驚きを隠せないでいた。
「はいはい、わたしの話題はしばらく、というか今日のところは[歪移動]させておいて、皆さん自己紹介してください!これからの学校生活に支障が出ますので。」
というエンリチェッタの合図で、生徒達は次々と自己紹介していった。そんな楽しそうな風景を見て、
「こりゃあ、俺の故郷と同じじゃねーか。魔術師の世界、ツーから、あの代表合宿と同じ空気かと思ったが、これは杞憂だっだぜ。」
一人の少年がこう呟いた。彼は教室の一番後ろの左端に座っていた。黒髪に黒い目、そしてツリ目ではあるが、その目つきは穏やかで、幼さかっこよさを思わせている。しかし、彼のそれは、他の男子とは明らかに違い、童顔だった。
「それでは最後、火野村君。」
えっ!?とさっきの陽気なムードとは一転、教室内が突然困惑なムードに包まれた。火野村という苗字は、魔術都市どころか、表世界に位置するヨーロッパを探しても見つからない。それこそが、この教室に漂う違和感の原因である。
そんな中、少年は教壇に立つ。この空気におびえることなく、戸惑うことなく。その姿はまるで、堂々たる騎士のようだった。
「皆さん、初めまして。今回、皆さんとクラスメイトになりました、日本出身の、火野村リクヤと言います。ま、仲良くやろうや!」
こうして少年、火野村リクヤの魔術高校での波乱の生活が今、幕を開ける。
どうでしたか?今回の物語は楽しかったでしょうか?今回は本当の第一章として、魔術都市の基本情報を記させていただきました。しかし、魔術都市には、まだまだ秘密がありますので、次回をお楽しみに!(ちなみに、次回はバトルもあります。)