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-envy-  作者: ずかみん
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13/20

大切な人が傷つくのは

 どこをどうやって歩いてきたのか覚えていない。

 パニックのせいで記憶が飛んでいた。


 気がついたら地下鉄のホームに下りてきていて、改札の前だった。

 ぼんやりと立っているあたしを迷惑そうによけながら、通学の学生が通り過ぎていった。


 よりこちゃんが追いかけて来ているかもしれないと思って、あたしは地下鉄構内の大きな黒い柱に身をかくした。あたしのあやしい行動を駅員さんが見ていて、恥ずかしくなったあたしはうつむいて自分の爪先を眺めた。


 女の人の悲鳴が聞こえた。それは年配の女性の声で、助けを求めていた。


「だれか! だれか救急車を呼んで下さい! 早くだれか!」


 胸騒ぎがして、じっとしていられなくなった。なんだかひどくいやな予感がした。あたしは来た道を学校の方へ戻った。


 立ち止り、騒ぎの方を眺めている男の人がいた。


 笛をふきながら走ってくるのは、構内を警備しているガードマンで、腰に黒い折りたたみ式の警棒が見える。


 地下へ下りる階段のところは、たくさんの電光広告に囲まれていて。その真ん中に人だかりがあった。

 人だかりの中心には、あたしと同じ制服の女の子が倒れていた。

 

 そんな、そんな――。

 

「よりこちゃん! 通して! 通してください!」


 夢中で人ごみをかき分けようとしたけれど、なかなかよりこちゃんにはたどり着けない。


――わたしの敵は、わたしの大切な人を傷つけようとするの。


 浅葱さんの言葉が、頭の中によみがえった。


――そんな……よりこちゃんは関係ないのに。


 よりこちゃんは両手で膝を押さえ、体を丸めていた。顔は真っ青で、額には脂汗が浮かんでいる。


 あたしは浅葱さんの気持ちを理解した。


 大切な人が傷つくのは、自分が怪我をすることより、ずっと怖かった。


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