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健吾はゆっくり目を覚ました

そこは何もない真っ白な空間だった


「なんだよ、異世界に行けんじゃなかったのか?」


チリン


体から何かが抜ける感覚のあと、何処からか鈴のような音が鳴った


ビキッビキッ


何かが割れるような音と共に白い空間に亀裂が入っていく


ここでも彼は自分に嘘をつく

本当は慌てているはずなのに自分の気持ちに嘘をつき、押さえつけて冷静になる


なるようにしかならないか


そしてまた意識を失った




目を覚ました場所は召喚される前にいた教室だった


ここはもとの世界だよな?

どう言うことだ?俺は異世界に召喚させたんじゃなかったのか?

幻かなんか見たってことか?

それにしてはこの状況は不可思議すぎるしな


クラスの中を見渡すと、机は倒れ黒板はひび割れ、時計も落ちていた

しかしドアや窓には傷がない

召喚される時に机や椅子を投げつけていたのか窓の近くには沢山の机があるのに窓は無傷


これでは異世界召喚の話がすべて彼がみた幻だと言い張るのは難しい

しかも隣のクラスや向かいのクラスには今なお授業を受けている生徒や先生がいるようだ

なのに彼のクラスだけ誰もいないのは不自然すぎるだろう


彼は取り合えず職員室に向かう

帰るわけにもいかず、このまま教室に留まっていてもどうしようもないからである


コンッコンッ

「失礼します」


職員室に入ると何人かの先生たちがいた


「どうしました?まだホームルームの時間ですよ、体調不良ですか?」


声をかけてきたのは

遠山海月(とおやまくらげ)先生だ

背は少し小さめで、黒く綺麗な髪を肩にかからない程度までの長さに揃え、紺色の眼鏡をかけている

仕事の出来る女性感が溢れているような人だ


「教室で不思議なことが起こって俺以外の人が居なくなってしまったんで、報告と相談の為に来ました」


異世界に召喚されそうになったとは言わないでおく


「ごめんなさい。あなたはそんな冗談を言うような生徒ではありませんけど、何を言ってるのか理解ができません」


遠山先生とは余り喋ったことはないが彼のことを知っていた


「理解できるもなにも俺にも何がなんだか分からないので説明のしようがないんですよ」


実際何が起こったのかは分かっていない

本当に異世界に召喚されそうになったのかどうなのかさえ分からないのだ


「他の人が居なくなったと言うのはあなた以外の人が、と言う意味ですか?」

「はい。俺以外の人が全員いなくなりました

どういうことなんでしょうか?何かのドッキリですか?」


遠山先生は机に肘をつき何かを考えている


「取り合えず教室に行ってみましょうか」


何を思ったのか先生は立ち上がり彼等の教室に向かう

ここにいても仕方ないので一様先生についていくことにする




「な、な、なんなんですか、この状況は!?」


いつもはクールで冷静な遠山先生もかなり驚いているようだ

いつもより大きな声を出して驚いている


「どうしますか、これ」


後ろから先生に声をかける


「どうするもこうするもありませんしよ。いったい何があったら教室がボロボロになるんですか

何であなたは無事なんですか

どうして回りは気づいていないんですか」


これはどうするべきだろうか、こんなに取り乱してる先生は始めてみた

というかこんなに慌てている状態の人を始めてみたからどう声をかければいいのかわからない


「まずは他の先生方に連絡して、関係機関にも連絡を入れないといけませんし、保護者の方への説明も」


ぽふっ


一人でアワアワしている先生を止める方法が分からなかったので頭を撫でてみる

好きな小説ではこうすると大体落ち着いていたので賭けてみる


「せ、先生をなでなでしてはいけません」


先生は手を払いのけ、自分の頭を押さえながら真っ赤な顔で文句を言ってくる

先生はクールだと思っていたが実はそうではないのかもしれないと思い始めた


「とりあえず今日は帰っていいですよ、明日話を聞くことになると思いますがいいですね」

「わかりました」


荷物を持って教室を出る


「今日はちゃんと休んでくださいね。明日から大変になるとは思いますが頑張りましょう」

「はい。では、失礼します」


一言断ってから学校を出て帰路につく


何をどう調べても異世界に召喚されたなんて結果が出るとは思えないけど、どうなることやら




いったい何が起こったと言うんでしょうか?

こんなに教室全体がボロボロになるぐらいのことが起こったなら大きい音もしますよね

そんな音はしませんでしたし、なにより近くにいた人たちが全く気づいていないって言うのが分かりませんね


職員室に戻りながら頭のなかで整理する

余りのことにテンパってはいたがやはり頭の回転は早く、冷静な人だ


「今は報告と対応が優先ですね」



このあと教師全員で各機関への連絡、保護者への連絡を入れ終わる頃にはかなり遅い時間になっていた


随分遅くなってしまいましたね

彼女は帰りながら教室でも出来事を思い出して顔を赤くした


初めて男の人に頭を撫でられました

彼女はキリッとした雰囲気から、誰からも一目おかれ男女ともに頼りにされるような人だ

だからこそ彼女は異性と付き合ったことはなく耐性がほとんどなかった


今まで意識なんかしたことなかったですが、私が慌ててるときに落ち着かせてくれて、こんなおばさんの頭を撫でてくれるなんて

でも彼は生徒ですし、そんなこと思っちゃいけませんよね。う~~~


一人頭を抱えながら家に帰った

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