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サッカー部は、特進の3年は4月のIHで、負ければ部活を辞めるが、普通クラスの3年は、年末に行われる高校サッカー予選に負けるまで部活をやる。だが、特進の3年も文化祭の部活の出し物に参加して引退が恒例なんだそうだ。
サッカー部は、文化祭で毎年露店で焼おにぎりボールという物を売っているらしい。焼おにぎりを野球のボールぐらいの大きさで丸くつくってサッカーボールの黒い部分を海苔でつけてサッカーボールにみたてているらしく、その黒い部分を切ることが一年生部員の役目だ。
つか、俺、教室の出し物でも切るだけで、部活の出し物も切るだけって少しむなしい…
「裕くん、文化祭の準備どう?」
文化祭まで後1か月、残念ながらその前に中間テストも後2週間後にひかえているので、特進クラスの奴等はピリピリしているそうだ。裕はあんまり関係ない雰囲気で余裕の表情に見える。というか、余裕なんだろう。
「ああ、うん。まぁ、適当にやってるよ。」
「適当って…。まぁ、お前が率先してやるとは思えないけどな。」
「…沢田さんが…。」
お、珍しく沢田さん情報だ!俺と美優が沢田さん情報をというか沢田さんとどうなっているのか気になってるので、何回も聞くたび裕が口を濁すので、今現在仲が進展しているのかイマイチ不明なのだ。美優は、あの日以来、沢田さんを見かけるたびに話しかけているから、裕に敵視されている。何しろ、美優は沢田さんを七海ちゃんと呼んでいたのに、七海と呼ぶようになっていて、沢田さんは、美優の事を鈴木さんと呼んでいたのに、いつの間にか美優さんと呼ぶようになっていたからだ。これに関しては、美優が沢田さんを押しきったのだが、本当は美優的には、呼び捨てがいいらしい。美優の密かな目標は、裕より先に沢田さんに呼び捨てで名前を呼んで貰うことらしい。
「七海がどうかしたの?」
ぴくっと裕が反応する。美優、空気を読んでくれ。久しぶりの裕からの沢田さん情報なのに…。
「…大翔の事…好きなのかも…。」
はぁああああああああああああああっ?!なんだそれ!!?いつから、そんな話になってんだよっ!?おもわず、美優の顔にどうなんだって思いを込めて見ちゃったよ。
美優は、そんな話聞いたことないって表情で顔を横にふる。
「どうしてそういう結論に達したんだよ。」
「…文化祭の準備で…よく話してるし…。」
「後は?」
「…大翔以外の男とは、ほとんど話しない…。」
おいおいおい…それだけかよ。と思った俺は、悪くないと思う。
「でも、七海が言ってたけど、大翔くんと七海、幼馴染みらしいよ。だからじゃない?仲がいいの。」
え。その話初めて聞くけどマジかよ!大翔のやつそんな事一言も言ってなかったぞ。
まぁ、大翔との話題にのぼるのは、主に、裕の事だからなぁ…。もしくは、俺の美優とののろけ話。
「え。そう…なんだ。」
あきらかに、ほっとした表情をした裕は、一瞬にしてまた眉をよせた。そんな表情も、絵になる男って…本当にドラマでも見てるみたいだ。
「不満そうだな。」
「…そりゃ…。」
「つか、沢田さんからしたら、お前と美優だって同じ様なもんだって。」
「は?違うだろ。美優には浩志がいるし。」
「いや。まぁ、それはそうだけど、お前だって美優以外の女子とは、そうそう話しないだろ。ってこと。」
俺がそういうと、裕は黙って俺から目をそらした。一応、自覚はあるらしい。裕が、美優以外に自分から話しかける女子を俺は見たことがない。話かけられたら、話…というか返事はするけど、話題をふることはない。話かけた方に話題がなければ、そこで会話は終了だ。そのてん、男の場合は違う。裕から普通に話かけることがある。入学当初、普通クラスの俺の友達が裕に話かけられたとき、俺の友達は偉く動揺していた。今でも普通クラスの俺の友達は、裕に話し掛けられると動揺する事がある。まぁ、わからなくもないけどな。
「…話すことが、ない。」
まぁ、沢田さん以外話する気がないだけなんだろうけど。沢田さんに話かけたくとも、話かけられない裕に免じてそこは、目をつぶろう。
「結局の所、裕くんは、七海と話がしたいって事なの?」
おいおい…美優さん。それはいっちゃなんねー言葉ですよ。なんて心の中で、美優につっこんだ。
裕は、美優の言葉に、顔を赤くし、そんな話じゃないとか四の五の言っていたけど、結局の所、そんな話な訳で…。
そして、なぜか知らないうちに、特進クラスの自習室を沢田さんに借りてもらうという話になり、裕、沢田さん、美優、俺の四人で中間テストの勉強会をしようという話を美優が沢田さんに持ちかけてあげるという事に、なってしまった…。
冗談だろおおおおっ!?と叫んで注目をあびてしまった…。最悪だ。
裕のヘタレ具合を、一人で楽しむ時川です。