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「胸が変って、何時から?朝は普通だったよな?」
「ああ…。浩志達と別れた後、クラスに行く途中で…茶道の講師のおばあちゃん先生いるだろ?あの先生が重たそうな荷物持ってたの見つけて…誰も手伝うような素振りなかったから、職員室まで持っていくの手伝おうと思って近づいたら俺の横を小走りで通り過ぎておばあちゃん先生の荷物をすっ、て、もって一緒に職員室までいった子がいたんだ。」
「で?」
「その時から…変な感じがする。」
おいおいおい…これってもしかしてもしかすると…。
「その子って女の子?」
俺の隣で裕の話を一緒に聞いていた美優が少し驚いた表情で裕を見る。どうやら俺と考えていることは、同じようだ。
「え。ああ、うん。」
やっぱりか!というか…こいつわかってないのか?
「!…ど、どんな子?先輩?」
「や…。同じクラスだった。」
「マジか?!すげー!女子の特進って学年で6人しかいないんだろ?!しかも裕と同じってトップ20人に入ってるってことかよ!」
そうなんだ。実は特進クラスは2クラスのみで成績のいい順でクラスが決まっている。裕のクラスは、1SAクラスでもちろん一番頭がいいクラスだ。入試でトップ20人にはいってないと入れないクラスだ。頭の1は、1学年という意味だ。入試でトップ20以下のクラスは、1Aクラスで特進クラスは、全部で50人のみ。1Aは、30人のクラス体制だ。定期テストの結果でクラスメイトが特進の中で代わるという、とんでもないシステムだ。
たとえば…今は同じクラスだったとしても、中間で悪い結果がでたりしたら、1SAから1Aに落ちてしまうこともある。逆をいえば、1Aから1SAにあがることも出来るってことだけど…。
俺達はというか、普通クラスは、13ホームルームから、17ホームルームまである。もちろん、テスト結果は関係なく、1年同じクラスメイトだ。ちなみに俺と美優は4組で同じだ。
「ああ。二人いるうちの一人だった。1週間同じクラスにいたのに…。全然気にもとめてなかったのに…。今朝から気になって仕方ないんだ。」
「それは…完全に初恋ってやつだろ。」
呆れたように俺が言うと、裕は持っていた弁当箱を落とした。まだ包みに入っている状態だから食べられるだろうが、確実に中身が崩れていそうだ。手から離れたとき、横に横転していたからな。
「はつ…こ…。」
裕の表情が一瞬にしてかわった。耳が少し赤くなり狼狽えている。そんな様子の裕を見るのは、幼馴染みの俺達は始めての事で、驚く。いままで、好きな子がいなかったという裕の言葉を立証した瞬間でもあった。
マジか?!…うわっ…どんな子なんだろ見てみたいな…。でも、特進クラスの校舎に立ち入ったら針のむしろだ。なにしろ、特進クラスの校舎と普通クラスの校舎の間に、校長室、職員室、保健室やら、技能教室…いわゆる、音楽室、美術室、科学室、生物室、書道室、等々の部屋がおさまっている校舎がどーんとたっているのだ。俺達が今いる中庭は、その技能教室がある建物と普通クラスがある建物との間だ。特進クラスは、その技能教室校舎にはいっている校長室やら職員室の前を通らなければ特進クラス校舎にいけなくなっている。特進クラスは学年で2クラスしかないから、全部で特進クラスは6クラスだけど、流石特進というだけあって、クラスルームとは別に個人学習室もある。裕によると、この個人学習室は、予約制で100室あるらしい。その他にも集団学習室4~6人ほどが勉強できる部屋が50室あるらしい。こっちも予約制で特進クラスの誰か一人が同時にいれば普通クラスでも使う事ができるらしいが、絶対に行きたくない。ちなみに、個人学習室は、普通クラスは使う事ができないらしい。いや、つかいたくもねーけどな。さて…これもちなみになるが…特進と普通クラスの見分け方は、簡単だ。男子は、制服のネクタイの色が違うし、女子はリボンの色が違う。そして、特進から普通に落ちる事は、絶対にない。それに、普通から特進にあがる…なんてこともない。なにしろ、入試の問題がそもそも違うのだ。募集も特進50名は、絶対だ。この学校の特色の1つだ。でも、そんな特別な特進クラスがあるからこそ、我が子を普通クラスに入らせたい。と願う保護者が多いのだ。部活動は、特進も同じで、体育祭や文化祭なども同じだから、交流がないわけではない。他の学校よりそんな訳で倍率も高いので、成績が普通でも、いい方に近い普通か、なにかしら特技があった方が、この高校に入りやすいのだ。
まあ、今はそれよりも幼馴染みの初恋の事だ。こんな状態で毎日を過ごす事になったらたまったものじゃない。
「とりあえず、飯くってから詳しく聞かせろ!」
うんうん、と美優も激しく同意する。
弁当箱をもとに戻して裕が開くとやっぱりご飯とおかずが片寄っていた。
場面がコロコロかわったりすることが多々あると思います。