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運命の朝食 その8

慌ててペーパーナプキンでガラスやカウンターの上の飛沫を拭き取る。


気がつくと女性も一緒になって拭いていた。


「………」


僕の視線に顔を上げ、ニッコリと笑う。


うーん。

きな臭くなってきた。


ここでホイホイと僕が女性に取り込まれたら、高額なツボとか買わされたりしそうだ。


ついつい動揺してしまったが、僕はもういい歳した大人だ。

危機回避ぐらいできなくてどうする。


「……あの」


意を決してまだ僕に笑っている女性に声をかけた。


「はい」


そんな嬉しそうにしたってダメだからな。


「……気安くそんなこと言ってたらいつか危ない目に合いますよ。男なんてだいたいろくなやついませんから。僕もそうだし」


決まった。


思いやりつつも拒否宣言。


きっと女性はカモを逃したとお茶を濁すような態度で退くことだろう。


「でも助かりました。失礼します」


僕は何も答えない女性にそう言い残し、トレイを持って立ち上がった。


「……パンツ見せます」


「は?」


「気安く言った言葉じゃないって証明するのにパンツ見せます」


「え?え?」


どっから聞こえてくる声だろう。

僕の妄想か?

でも、女性が真っ赤な顔で目には涙をたっぷり溜めて僕を見上げて……いるな。


「私、ほんき、ですから」


女性は靴紐がほどけたままのスニーカーの足を上げて僕の両足の間へ入れた。

そして、その向こうにある椅子へ足を乗せる。


「ちょっ……まっ……」


トレイを持ったまま小声で戸惑う僕の視界に、学生風の男がこちらを血走った横目で凝視しているのが映る。


女性はめくれ上がったスカートの裾をさらに短くしようと震える両手でつかんだ。


輝くような太ももの肌艶に一瞬、眩む。


僕は何とか正気を保って学生風の男に見えないよう立ち位置をずらした。


「……わかった、わかった、とにかく足をおろしてっ……」


小声で僕は必死に懇願した。


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