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運命の朝食 その7

女性は僕の手から離れ、アイスコーヒーを片手に前を歩く。


注目していた周りの視線は無関心に散らばっていた。


落ち着け、落ち着け。


乱れた鼓動とふにゃふにゃになった意志を深い呼吸で何とか持ち直そうとする。


「わっ!」


声がしたと思った途端に前を行く女性の後頭部が大きく揺れた。


とっさの出来事だった。


「大丈夫ですか?」


今度は僕が尋ねる番だ。


「……はい」


僕に身体を支えられた女性は驚いたままの表情で頷く。

しっかりとつかまれたアイスコーヒーのカップが彼女の腹の上で、たぷん、と一つ大きく揺れた。

フタがあってよかった。


体勢としては社交ダンスで男性が女性の倒れかかった背中を支えているみたいな感じだ。


足元に目をやると、案の定、スニーカーの靴紐がほどけて長く垂れていた。


恐らく踏んづけてしまったのだろう。


散っていた周りの視線がまた僕らに集まっていて、慌てて支えていた腕を女性から離した。


学生風の男は横目で冷ややかに、子供連れの女性は驚いて、老夫婦は嬉しそうに笑って、レジの店員は舌打ちして。


元の席に座りながら、内心ではちゃんと彼女を支えられてよかったと胸を撫で下ろしていた。


歳と共に反射神経も怪しくなっていたのだ。


でも、何とか挽回できただろうと、いい気で飲みかけのアイスコーヒーのストローに口をつけた。


「……王子様みたいでした」


女性の唐突なその言葉に僕がアイスコーヒーを吹き出したのは言うまでもないだろう。


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