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運命の朝食 その6

僕は言われるままにストローをくわえ、アイスコーヒーを吸い込んだ。


もう完全に喉には何も残っていない。


「……もう、大丈夫ですから……あ、新しいの買ってきます」


背中にあてられた手から逃れるように僕は身体をねじった。



女性が何かを言いかけていたが席から立ち上がってレジに向かった。


今度は並ぶ必要なくレジカウンターでアイスコーヒーを注文して、カップを受け取る。


セルフサービスのコーヒーメーカーの前でカップにコーヒーが満たされるのを待っていた。


「あの、ありがとうございます」


女性が僕の隣に立って顔を覗き込んできた。


「っ!……い、いえ……」


もう詰まる物はないのに、言葉はつっかえる。


「………」


「………」


無言のまま注がれるコーヒー。

クラッシュされた氷が崩れながら溶けてゆく。


いつもより注がれるのを遅く感じる。


同じようにコーヒーを見ている彼女も同じことを考えている気がした。


やっと注ぐのが終わり僕はカップを取り出す。


「ブラックですか?」


「はい」


「………」


そこで、そんな無邪気に笑うか?


女性は僕の手に少しふれてカップを受け取った。


いたたまれない。


僕は店をそのまま出ようとした。


「待って!」


周りが一気に僕達に注目する。


女性が僕の右手をしっかりと握っていた。


「コーヒー、残ってますよ」


女性がさっきまで僕が座っていた席を指さす。

そこには飲みかけのアイスコーヒーと僕が食べ散らかしたトレイがそのままだった。


「……はい」


本当はぶっちぎって逃げようかと一瞬考えたが、それは大人気ない。

何よりも握られた彼女の手があんまりにも柔らかくてどんな思考もふにゃふにゃにされたようだった。



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