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運命の朝食 その5
考えるよりも先に僕はストローをくわえていた。
冷たくこおばしい液体が僕の喉の詰まりを速やかに流してゆく。
痛みは残っているが、先程までの苦痛に比べたら何ともない。
「ケホッ……す、すみません……ありがとう……」
うつむいたまま、お礼を絞り出す。
背中に控え目な振動を感じる。
「大丈夫ですか?」
すぐそばで長い髪が揺れる。
「っ!」
顔を上げると、さっきの女性がすぐ隣で座っていた。
「あ、無理にしゃべらないでください」
背中の振動が撫でる感触に変わる。
こんなにびっくりしたのは何年振りだ?
動揺しまくって目の前がチカチカとしている。
「……もっと飲んでください」
女性は僕の背中を撫でさすりながら、空いた手でアイスコーヒーのカップを持ち上げ僕の口元に寄せてくる。
「……飲んでください」
上目遣いで女性は僕に促してきた。
まともに見た女性の顔は、薄化粧に幼さが色濃く残るものだった。
目の輝きとか、くちびるの血色とか、頬の産毛が日に透けている様が無防備すぎる。
眉の辺りで揃えた前髪がさらにそれを加速して、でも、かろうじて肩を越える長さの後ろ髪と、白いシャツが女性を女の子と言わせない力があった。




