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朝ごはんも夕ごはんも その4

杏はバイト先である近くの総合病院へ一足先にコンビニを出た。


病院のバイト?と少し驚くと医療事務だと杏は答えた。


夕方、山原舞を塾に迎えに行き一緒に帰るそうだ。


明日もここで朝ごはんを食べる約束をした。


僕もコンビニを出て塾へ向かう。


さっきまでの杏との会話を反芻しながら街を歩く。


まだまだ現実的ではない浮わついた語らいに苦笑する。


そして杏の笑顔が僕を埋めつくし、またもや降参だ。


嬉しい恋の始まりを楽しむ余裕は胸の高鳴りに押し潰されそうだけれど、足取りは軽くまるで無敵状態だった。


それからお互いの休みの日までコンビニでの朝食は続いた。


僕も杏もよく喋っていつもあっという間に時間が過ぎてゆく。


たわいの無い会話が続くことが不思議だった。


杏が話す家族のことや、僕が話す最近の受験事情。


まるで接点のない二人の会話が二人で話すと共通の話題に変わる。


分かってほしいとか、意見がほしいとかじゃない、ただあなたに聞いてほしいだけだと、そんな優しい気持ちだった。


「明日、数雪さん休みですよね?」


杏が声のトーンを落とし、僕を見据えた。


「ああ」


杏が妙におかしかったがこらえて普通に頷く。


「私も休みですけれど、一緒に過ごしてくれますか?」


「もちろん」


僕はもうこらえきれず笑みをこぼす。


「っ!やったぜ!」


杏が指を鳴らし無邪気に喜ぶ。


「数雪さんの家に行きたいです。私、ご飯作ります。夕ごはん、二人で食べましょうね」


「……え」


てっきり二人でどこかへ出掛けるつもりでいた僕は思考が停止した。


「もちろんデザートは私ですよ!ニシシシ!」


「………」


「数雪さん、逃げないでくださいね」


杏がおどけて僕の肩をテーブル越しにつかむ。


「……そっちこそ、びびって泣くなよ」


負けてられないと思わず言い返すと、杏が顔をこれまでで一番真っ赤に染めてテーブルに突っ伏した。

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