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許して受け入れて その7

白いワンピースを着た杏が、僕と今から関わる為に存在している。


突然、空気が変わり僕は金縛りになる。


──こっからが本番だ。


なぜかそんな言葉が頭に浮かぶ。


今までの僕一人で考えあぐねていたことなど練習にもならない。


杏を前にして僕は何もできない。


「井野数雪先生で合ってます……よね?」


笑顔を少し曇らせ、杏が僕に近づく。


「………」


僕は声も出せずただ頷いた。


「私、山原杏と申します。山原舞の姉です。いつも妹がお世話になっております」


杏が深々とお辞儀する。


山原兄の彼女ではなく姉、ということになるのか。


黙ったままお辞儀し返し、納得する。


「私のこと覚えてますか?コンビニで……」


「………」


まだ声を出せずに頷く。


「あの時のこと怒ってますか?」


「え?」


やっと声が出る。


怒ってる?

僕が?

助けてもらったのに?


僕は困惑しながらも頭を左右に振った。


「……いや、絶対に怒ってますよね?昨日も塾で私を見る目が怖かったですし」


「………」


唇を尖らして杏が不満そうにぼやく。


「パンツのことは後悔してませんから!」


杏が急に大きな声を出し、もっと僕に近づいた。


通行人のおばちゃんが目をクワっと見開いて僕らを見ながら通り過ぎる。


「ちょっと……!」


僕はあわてて人気のない路地へ杏を促す。


「……誤解だよ」


きょろきょろと周りを気にしながら小声で杏に言う。


「……誤解なんかじゃありません。絶対、井野数雪先生は私に怒ってます」


腰に両手をあてて杏が威圧的に言い放つ。

態度がおかしくないかい?


「絶対、私のこと何かの勧誘だと勘違いしてたし、それに私、本当に井野数雪先生のこと王子様みたいって思ったから、だから……パンツ見せるって言ったんです!」


「………」


もう、絶句である。


「信じてほしかったから……身体張ったんですよ……」


また唇を尖らして杏が弱々しくぼやく。


「でも、井野数雪先生は私を見損なって怒ってるから、どうしてパンツだったのかちゃんと言っときたくて」


「見損なうも何も……」


僕に対してそんな必要性ありますか?と、続けようとして僕は急に腑に落ちた。


そうか、僕は杏に怒ってた……いや、杏のあの行動に感じた不条理さをどうにかしたかった。

でも、僕は逃げていた。

杏を好きになっても否定したかったのはここがネックになってたのかもしれない。


雲間から光が真っ直ぐ射すような神々しい解に僕は眩むことなく向き合った。


「……ああ、ああ、そうだ!下着を見せるなんて初対面の男に言ったらだめだろ!自分を安売りするんじゃない!」


「……はい」


杏が僕の両手を自分の両手でぎゅっと握って大きく頷いた。


「??え?僕は……え?」


現実と妄想が交差したような混乱が僕の頭をぐるぐるとかき回す。


見下ろせば、僕の両手は杏の両手につながれている。


そんな……僕が誰かを叱るなんて。


生まれて初めてじゃないか?


生徒にも注意はすれど、叱ったことなんて一度もない。


目線を元に戻すと、僕を蕩けそうなほどうっとりと眺めて頬を赤く染めた杏がいた。

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