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許して受け入れて その6
コンビニに杏はいなかった。
ほっとした。
でも、がっかりもした。
たとえば、世界が色づくように、誰かを好きになってしまえばどんなに幸せだろう。
コンビニを出て塾へ行く道々、手放しで喜んでいる自分を想像してみた。
おっさんがスキップしている姿しか浮かばない。
こわっ!
しかし、こうして腑に落ちないような感じも納得いかない。
年の功でなんとかうまい散らし方はないもんだろうか。
物思いにふけっていると塾がある通りに差し掛かった時、視界に白い物がちらついた。
「………」
「井野数雪先生」
歩道と車道の間の柵にもたれたまま、杏が笑顔で待ち構えていた。




