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許して受け入れて その5

不安定だからといって僕の日常はなんら変わらないし、変わってもらっては困る。


いつもの時間に出勤するのだ。


電車に揺られ、精神の乱れをなんとか整えようと見慣れた流れる景色を眺める。


「………」


恋した女性なんて今までたくさん現れたことはあったし。と、やけになったように心の中で言い捨てた。


たくさん……とは言い過ぎたけれども。


隣の席だった初恋の大杉さん。

笑顔が優しい女の子だった。


暗い僕をいつも気遣ってくれたクラス委員の望月さん。


同じ大学で、初めてできた恋人の姫華。

名前の通りわがままで振り回されたが、とても楽しかった。


教員の頃、結婚まで考えた養護教諭の紗和。

僕を理解して、支えてくれた。


僕の恋愛をものの一分足らずでダイジェストしても、心はざわつかない。


ちゃんと恋をした。


そんな安心感すら覚える。


姫華や紗和とは色々あったが、それすらもしみじみと僕の胸の奥をあたためてくれる、大切な思い出だった。


吊革を握り直し、静かに息を吐く。


目を閉じて、杏をイメージした。


僕をしっかりと見据えたイメージだ。


下半身がストンと落ちるような悪寒が走る。


急いで目を開けた。


窓から射し込む秋の柔らかな光すら僕を眩ませる。


「………はぁ」


重苦しいため息をつく。


たぶん、僕は杏に恋をしてしまっている。

それは認めよう。


でも、その心の変化がつらい。


杏が僕をどう思っているか知りたい、とか以前の問題である。


僕がこの恋を否定している。


その理由に年齢的なものも含まれているとおもうのだが、自分でもいまいち分かっていないからこんなにつらいのだ。


失敗するのが怖いのか、自問自答してみるが返事は無言である。


山原舞の迎えに来ていた、ということはこれからも会う機会があるかもしれない。


あのコンビニを避けても会う時は会う。


世間の狭さに諦めのようなゆるさを覚えた。


不意に朝食を食べていないことに気付き、電車を降りたらあのコンビニに寄って行こうと考えるのであった。

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