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許して受け入れて その4

それからどうやって自分のアパートへ帰り着いたのか思い出せない。


気が付いたら真っ暗な和室で座り込み窓の外を見上げていた。


現在に思考が追い付いて、でも着替える気にもなれずそのまま寝転がる。


畳の固さに身体が溶けそうな錯覚を覚え、すぅっと腹の奥が冷えた。


暗闇に僕の目だけが光っている。

そんなイメージが見える。


怖い怖い。


生徒の気持ちが少しだけ分かる。


気持ちが軽くなり、起き上がって電気を点けた。


やっぱり眩しくてしばらくは目を開けられない。


やっと眩しさが消えて、いつもの台所が現れた。


「え?」


白いシャツと白いスカートを着た杏がそこに居る。


「……どうして?」


声がかすれた。


杏はただ微笑んで僕に歩み寄る。


塾の玄関での逡巡はもう微塵も感じられない。

僕に受け入れられる気満々のようだ。


僕が戸惑っている間にも杏はどんどん僕に近づく。


「せんせー、我慢したらだめだよ?」


耳元で杏が山原舞の声で囁く。


蠱惑的な響きだ。

でも、山原舞の声なので浸りきれない。


現実の杏はどんな声だったか思い出せないもどかしさもそれを手伝う。


杏の幻はそのまま僕を通り過ぎ消えた。


どうすればいいのか、どう思えばいいのか。


今、立っている畳すら危うい。


長年築き上げてきた理性が僕を支えようとしている。

でも直感的な欲望が周りを飛び回る。


支点がぶれる。


こんな不安定なのはごめんだよ。

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