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許して受け入れて その2

さすがにゾンビ先生とは呼ばれず、いつもの井野先生に戻ったわけだが。


トイレの鏡で顔色が悪いか確認するが特に変わりないようだった。


しっかりしろ。


ぱしっと両手で顔を叩く。


その後の授業では生徒達は震え上がることはなく、順調に一日は終わる。


「せんせー、お疲れさま」


山原は今日も自習して最後まで残っていた。

僕の腕にしゅるりと絡みつき体重をかけてくる。


「ああ、山原も頑張ってるな」


それとなく腕を外しながら微笑む。


「ふん……来年は受験だからさ」


むっとしながらも山原はもう絡みついてはこない。


「今日は迎え来てるのか?」


「うん。昨日はありがとう。せんせー。ばあちゃんが急に食あたりでお父さんもお母さんも病院へ付き添ってたから」


「おばあさん、大丈夫なのか?」


「ぜーんぜんへーき。もう帰ってきてるし」


「そうか」


階段をおりて玄関で山原は立ち止まる。


「げっ!」


思わず引き返すような仕草で山原は僕の身体に軽くあたった。


「……どうしたんだ?」


動こうとしない山原を避けて僕は生徒がそれぞれ靴を履いて帰って行く光景をちゃんと見た。


この塾は中学三年生までしか通っていないので、大人がまざっていれば身長差と服装の雰囲気ですぐに分かる。


カラフルな私服、モノトーンの制服、賑やかな別れの会話。


それらに囲まれながらその人は白く輝き、笑って立っていた。


「まーちゃん!」


僕を王子様みたいと言った、パンツを見せると言った、連絡くださいと言った、山原兄の彼女かもしれない僕が無理に忘れないと決めたあの女性が、山原に大きく手を振った。


(あんず)が来たかー」


あちゃー、と山原が頭を掻く。


あんず……なんか、意外な名前だな。


僕は(よだれ)が垂れそうなほど口を開けて、ただ杏に見蕩れていた。

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