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運命回避の輪廻 その7

アパートに帰ると塾長から連絡があった。


『山原からは帰ったって家から連絡あったのに、お前からないからよぉ』


「すみません」


真っ暗な狭い玄関で頭を下げる。


『かまわないけど、なあ、井野…』


「……何ですか?」


塾長が言葉を続けないので先を促した。


『いや……明日もよろしく頼むわ』


「はい、失礼します」


電話を切って電気も点けないまま、台所を突っ切り和室へ寝転がる。


天井をぼんやり見つめる。


いつもの気分に戻りたいのに頭の中と胸の奥がさざ波立って落ち着かない。


うつ伏せになり目を閉じる。


真っ暗な部屋、真っ暗な思考。


浅い呼吸を繰り返す。


闇に包まれて僕は願った。


──どうか、どうか。


どうか願わないでいられますように、と願った。


どれくらい時間が経ったのだろう。


さざ波はまだおさまらず、それでも頭の中と身体が冷えてきたので起き上がる。


部屋の電気を点けると、眩しさでしばらく目が開けられなかった。


もたもたと着替え、腹がへっていることに気が付く。


作りおきしていたカレーを鍋ごと冷蔵庫から出しコンロにかける。


無心のまま焦がさないようかき混ぜ続ける。


ぷつぷつとカレーの表面に気泡が出てきた。


炊飯器からご飯を皿によそう。

それにトロリとしたカレーをかける。


じゃがいもやにんじんをやたら大きく切っていたので見た感じはボリュームがある。

肉は鳥のもも肉をたっぷり入れてある。


ミネラルウォーターをグラスにそそぎ、スプーンを箸立てから取って食卓についた。


熱いカレーをすくい、口に運ぶ。


口腔内を焼く温度と旨味が染み渡る。


僕は猫舌ではないので次々にカレーを口に運ぶ。


うまい、うまい、うまい、うまい、うまい。


自分で作ってもカレーはうまい。


腹が満たされたら頭や胸の奥のさざ波が消えた。


グラスの水を一気に飲み干す。


「……はぁー」


一息ついてグラスを食卓に置こうとした。


「………」


食卓の上にグラスを伝い落ちた水滴が正確な円を描いていた。


しかし、僕が持っているグラスから新たな水滴が一粒落ちるとその円は盛り上がってゆがみ、外へとわずかに滲んだ。


もう、円ではない。

もう、()ではない。


逃げ続ける数式を求めたって解は存在しない。


分かっているのに受け入れられないのだ。

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