運命回避の輪廻 その5
山原のうつむいた頭頂部を見つめ、根元の髪が黒いのに今さら苦しくなる。
生徒に心配されてどうする。
本当は僕が山原を心配しなければならないというのに。
逃げてきたのは自分の意思だが、締め付けるような情けなさにゆらぐ。
───やめろ。
きっと間違える。
啓示めいた声が頭の奥で呟いた。
そうだ。
僕は間違えるのが何よりも怖い。
だったらせめて、山原によけいな心配をさせないようにもっとしっかりしなくては。
0
あの時のことは
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夢だと思って
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手放すのだ
XXXX
忘れたつもりでいるのだから
XXXX
焼き付いた数字をまずは跡形もなく消そう。
そうすれば、数字に付随する記憶が呼び起こされることはない。
どうやったら消せるのか……とにかく数式を帰ったら解きまくってみようか。
K駅に到着して僕と山原は電車を降りた。
改札の向こうで体格のいい男性が手を振っていた。
「あ、お兄ちゃん」
山原が手を振り返す。
なるほど、優しそうな目元がそっくりだった。
「せんせー、もう大丈夫だから早く乗ってください」
「ああ、家に着いたら塾長に連絡な」
両親が不在、ということなので用心して言っておく。
「はいはい」
めんどくさそうに山原は肩をすくめ、改札に向かう。
僕は再び電車に乗って、さっきと同じ場所に落ち着いた。
発車の音楽と共にドアが閉まる。
改札の向こうで山原が手を振り、兄が軽く会釈していた。
僕も会釈し返す。
山原、ありがとな。
心の中で呟き、徹夜してでも明日はきっといつもの自分になる決心をした。
動き出した窓の外の景色、山原が兄を見上げて笑っている。
いや、兄ではなくその後ろを覗きこんで驚いて笑っている。
他に誰か居るのか?
遠ざかる兄妹の風景を窓に顔を寄せてもう少し見守る。
すると、山原兄の後ろから、白い服を着た女性がひょっこりと出てきた。




