運命回避の輪廻 その4
肌寒い夜なのに山原は冷たいジュースをホームで一気飲みした。
本当に喉が乾いていたのだろう。
自分だったら即、腹を壊しそうだ。
「せんせー、ごちそーさま!」
「どういたしまして」
山原がペットボトルをごみ箱に捨てると、ちょうどアナウンス付きの音楽と共に電車が滑り込んできた。
電車の中はそれなりに混んでいて、山原を入ってすぐの席に座らせ僕はその横でポールにつかまって立っていた。
発車の音楽が鳴り、電車がゆっくりと動き出す。
スピードに乗ると山原は僕を見上げた。
「せんせー、大丈夫?」
「大丈夫だ」
立っていることを気遣っているのだと思い、微笑んで頷く。
「……最近、よくぼんやりしてるからさ。なんかあった?」
「………」
僕の足の心配ではなかった。
不意討ちをくらったように呼吸が止まる。
「ほら、やっぱりなんかあったんだ」
山原が解を分かった時の顔をした。
「何もないさ」
振り払うように笑い、平然を装う。
「嘘。窓の外ながめて泣きそうな顔しちゃってさ、いい大人なのに」
「……」
「せんせー、すました顔してるけど思いっきり顔に出るタイプだから」
「ええ?」
「ま、私だけしか気付いてないから安心しなよ」
「……」
あの終電に乗り合わせたサラリーマンも気付いていたようだが、あれは油断していたのだ。
「何かあっても自分で解決するよ。ありがとな」
あんまり掘り返してほしくないので山原に礼を言い、暗い窓の外を向いた。
窓に反射して映る僕と目が合う。
強ばった真顔が恐ろしいくらい大人だ。
「……せんせー」
「ん?」
唇の両端を引き上げて山原を向く。
「……我慢したらだめだよ。大人も無理したらだめなんだからね」
「………」
「せんせー、分かった?」
「分かったよ」
僕の返事に不満そうな顔の山原だが、正面を向きため息をつくと目を閉じた。




