終電に間に合うなら その2
でも、生徒はそんなこと望んでいない。
勉強じゃない何かで目を覚まさせてほしいのだ。
僕はそんなこと、思いつかない。
どうにかしたいのにどうにもしてやれない。
でも、自分で気付くしかないなんて突き放したことは思わない。
だって、子供だから。
少し背中を支えたり押したりするだけでいいのだ。
そうすれば子供は大きな翼を広げ、僕なんかが行けない所へ軽々と飛んでゆくのだ。
「それが分かってりゃまだやれたんじゃねーのか?」
塾長が面接の時、無精髭を撫でながら重いため息をついた。
「……怖いんだと思います」
「何が?」
「間違うのが……」
「……お前さんも重傷だな」
重傷だと言われたのに何故か採用されてもう十年か。
不登校の子供を受け入れるようになって七年。
僕は逃げ腰だったが転職する気はなかったので今まで何とかやってきた。
不登校とは言ってもこの塾の居心地がいいのか子供達はのびのびと勉強している。
昼から夜塾が閉まるまでいつ来てもいいのが大きいのかもしれない。
塾に来て講師達と喋って帰る子もいる。
親に無理矢理連れて来られた子供は少しずつ来たりもするけれど、一度も来ないまま辞めることがほとんどだ。
その子供によって段階があるから塾に来られる子供はある程度、準備が整っているのだろう。
僕は数学が専門だけれどこの塾に来てからは何でも教えられるようになった。
(進学コースでは数学だけ)
色んな生徒に関わって、色んな教えかたで勉強を教えて、仕事しているってすごく実感する。
でも、子供を取り巻く環境やそれが反射したような態度や言動に当てられるとしんどくなる。
生徒の前ではおくびにも出さないけれど。
でも、確かに僕の鍵のかかった記憶がフラッシュバックするのだ。




