「全国大会」
俺らチームは最後の最後まで上りつめた。
10人と言うギリギリでの人数で俺らは幾多もの至難を乗り越えて来た。
準決勝で国内最強と呼び名の高い前園西高校を倒したのは記憶に新しい。
その前の準々決勝では、地区大会で一度ボロ負けした、学童館高校に見事、完封勝ちした。
俺らは県内予選、地区予選で苦戦しながらも全国大会出場の切符を手にした。
テレビでの最初の俺らの扱われ方は全国大会初出場だった事もあって酷いものだった。
「全国大会初出場!一体どこまで闘えるか?」
なんてありきたりな事を言いい、その番組のコメンテーターときたら、
「一回戦敗退だけは免れたいですね!頑張ってほしいです。」
とむちゃくちゃだった。
だが、学童館に完封勝利し、前園西に勝利したその頃から、
メディアもコロっと態度を変え、俺らをはやし立て始めた。
最初は「一回戦敗退だけは免れたいですね・・。」とか
「厳しいでしょうね・・今年は・・なにせ最強チームがそろっていますから・・。」
なんて言っていた、コメンテーター達も軒並み
「今年はこの高校です!!確実に優勝しますよ!テレビの前の皆さん!優勝の瞬間をお見逃しなく!」
とまで言い切っていた。
言われるまでもなく、確実に流れは俺らにある。
俺らもそう確信していた。
そして、決勝戦が始まり、前半後半で決着がつかないまま、試合は延長戦にもつれ込んだ。
相手は、去年の準優勝校、静京水産高校。
ギリギリの人数で県内大会、地区大会、全国大会と切り盛りして来た俺らは延長戦では既に満身創痍だった。
もう、体力は底をつき、気合いと優勝への執着だけが俺らの原動力だった。
そんな俺らに延長12回、トラブルが襲いかかった。
エースの川島の負傷である。
川島の腕は既にパンパンに腫れ上がり、もう使い物にはならなくなっていた。
川島は続投を望んだが、状態を見るとそうもいかず、
俺らは、しょうがなく、全国大会初戦からいままでずっとスターティング・ベンチだった
1年の大木を投入せざるおえなかった。
しかし、川島の負傷によって、チーム全体は今まで以上に団結感が増し、
それに便乗して、最初は緊張でミスの連発をしていた1年の大木も最終的には大活躍をした。
その結果、俺らは見事、優勝カップを手にする事が出来た。
そして、試合終了後、優勝カップを受け取り、そのままキャプテンとして、テレビインタビューを受けた。
「いやぁー、手にしているカップが光り輝いていますね!今大会全ての試合が終わったわけですが、全てを振り返って今、どのような心境でしょうか?」
「えーと、そうですねー。大会初戦からいろいろとあったんですけど、仲間達とともにこのカップを手にする事が出来て本当に本当に嬉しいですね。」
「白熱の決勝戦、エースの川島君が最後の最後で負傷。と言う事で、
グランドを去る事になってしまいましたね。ですが、皆さん団結し、最後は優勝!!
このカップを手にしましたね!更に、初出場の1年生、大木君大活躍でした。
どうですか?決勝戦を振り返ってみて?」
「えーと・・はい、そうですね。まぁ、正直、延長戦のあの状態で川島の負傷はかなりヤバいなぁ・・これでおしまいになっちゃうのかな?と思いましたね。まぁ、それから、全国大会になってから、美術部の大木は一回も試合に出てなかったんで、コイツに任せられるかなぁ?っていう不安もあったんですけど、まぁ、最終的には、有終の美を飾れてよかったなぁと思います。」
「えー・・・といいますと、えーと・・・1年生大木君は文化部と言う事ですかね?
えー・・ですと、キャプテンを含めて二人の文化部が大会に参加していたと言う事ですよね?」
「はい。そうです。あっ・・・・」
その俺の返事を聞くと、インタビュアーは俺の手から優勝カップを取り、
それを取り囲むカメラマン達は、無視する様に俺の元から去って行き、
足早に準優勝校の静京水産高校の方へ走って行った。
その瞬間、大会規定34項の「文化部の参加は一人まで」の大会規定違反をした事になり、
最後の最後で俺らは「全国高校生多種目大会」の優勝を逃した。
遠くで敵チーム監督が胴上げをされていた事が今でも忘れられない。
人間にはそれぞれ長所があります。その長所を使って生きて行く事が、最も「楽しい事」と僕は理解します。また人間は、十人十色であるから面白いのです。日本は他諸外国に比べそんな長所が使いにくく、多くの人間が同一化してしまっている国です。夢は夢となる前に除去されてしまいます。そんな日本と言う窮屈な国を小説と言う文章の中で表現したいと思い、作ったわけであります。もちろん、ただ自国を批評するだけでなく、私は、日本も夢追い人が夢を追えるそんな国に成る事を望みます。多くの人が夢を追いかける国。まさに夢の国です。