熊との死闘。そして、酔う
オーク共を倒し、移動を再開するユウマ達。他の魔物がぜんぜん出てこない。 偶然だろうか? それとも……
「おい! オークがいたぞ!」
ユウマが考え事をしていたら、アンソルが叫ぶ。ユウマだけが一瞬出るのが遅くなったが問題はなく、戦闘が開始する。それでも、ユウマ達とオーク共との距離は15メートルはある。
「ユーマの魔法の後に突っ込むぞ」
レイゲルが叫ぶ。全員は「了解」と返事をし陣形を組む。オーク達は四匹である。先程よりも一匹少ない分、楽に終わるだろうな。
「我が、具現化するは汝を縛る氷の鎖 《アイスチェーン》 」
ユウマは馬車で揺られながら、魔法を編み出していた。ユウマは片手を前方から氷の鎖が出現し、オーク達にめがけて飛んでいき動きを封じる。
「今だ! やれ!」
ユウマが叫ぶより早くにレイゲルが大剣でオークの首を的確に狙い、吹き飛ばす。アンソルもレイゲルに続く形でオークの頭をハンマーで潰した。今回は発見が早かったので、アンソルも前衛に出ていた。残り二匹になる。二匹は逃げようと暴れるが、氷の鎖に縛られているので、なすすべもなく、二人に殺される。
「ユーマもサポート系の魔法も使えるんだな」
レイゲルは心底、意外そうに言う。
ユウマは「まぁな」と一言だけ返す。それから周囲を警戒しながら黙々と剥ぎ取り作業に入った。まだ、ユウマは剥ぎ取りの作業に慣れていないので、他の人より遅かった。
作業も終わり、移動に移ろうとするあたりで、何かがこっちに近づいてくるような音が聞こえ初める。
「何かの足音か?」
ユウマは周りに確認するように呟いた。
「ビッグベアーが来たんじゃねーのか?」
レイゲルも音に気付くが、大した緊張感もなく、答える。このメンバーでならビッグベアーぐらい余裕で倒せると考えているからだ。ユウマ達が少し話をしていると、足音も徐々に大きくなる。明かにこちらに近付いてきているのが判る。
ぼんやりと、足音の正体が視界に映る。ユウマ達に向かって疾走している。
「熊かな? そんなのが近づいてきてるっぽい」
ユウマが疑問形で呟やくと、レイゲルとアンソルも足音の正体の方に視線を向けて驚く。
「全員、逃げろ―!!」
レイゲルは近づいてくる正体に気付くと同時に叫ぶ。だが、もう遅いとばかりに熊はユウマ達の前に現れた。その熊はビッグベアーよりは一回り小さい2メートル半ぐらいの大きさだ。その爪は30センチ程で、下手な刃物より鋭い。頭には50センチ程の角が二本生えていた。その熊は赤黑い色の毛皮をまとっている。
「狂気熊が何でこんな場所にいるんじゃ」
アンソルも驚きの言葉を口にする。
「狂気熊ってそんなに強いんですか?」
何も知らないユウマは狂気熊と呼ばれる熊から視線を逸らさずに訊ねる。
「バカ野郎! 強いに決まってんだろうが! ランクB+の魔物だぞ」
レイゲルが慌てている。+とはそのランクの上位を意味する。-はその逆だ。
「狂気熊と出会ったら逃げるのは、困難じゃ。小僧とミーアだけは先に逃げな。儂とアンソルでここは食い止める」
アンソルの意見にレイゲルも頷いて同意する。
「仲間を置いて逃げるわけないだろうが!。戦うなら、三人でやれば何とかなるだろう」
ユウマはそう叫び、魔法の詠唱を始める。レイゲルもアンソルも「そうだな」って頷きながら構えている。
「ミーア、お前は馬車の中に隠れてろ!」
レイゲルはミーアに指示を出すべく、叫んだ。ミーアも状況を把握して馬車の中に隠れた。
「我が、具現化するは汝を縛る氷の鎖 《アイスチェーン》 」
先程にユウマが発動した束縛系の魔法をもう一度発動する。氷の鎖が狂気熊に絡まり、動きを封じる。そこにレイゲルとアンソルがチャンスとばかりに突っ込む。だが、二人が突っ込んだ瞬間に氷の鎖が破壊され、勢いよく爪を横に振るう。アンソルはハンマーでガードしたが、吹き飛ばされ、近くの木に激突した。そこに、レイゲルが横から剣を振るったが狂気熊の横腹に直撃した。
「何!? 切れないだと!?」
しかし、レイゲルの剣は丈夫な毛皮と分厚い肉に拒まれ、ダメージが薄い。そこを狂気熊は腕を縦に振るう。レイゲルは咄嗟に大剣で防御するが、勢いが強すぎて、地面に膝を着いた。そこで、狂気熊も攻撃を終える筈もなく、追撃とばかりに凶悪な腕を振るう。その攻撃でレイゲルを吹き飛ばす。
「ミーア、二人の治療を頼む! 俺がこいつを引き受ける! その間に頼めるか?」
ユウマは馬車に居るミーアに声をかける。危険なのは百も承知だが、ミーアに頼むしかない。
「わかりました。ユーマさんも気を付けて下さい!」
ミーアは馬車から出て、レイゲルとアンソルを馬車の前まで移動させる。そして、二人に治癒魔法を詠唱する。
「彼の傷を癒せ 《ヒール》 」
ミーアの詠唱が聞こえる中で、ユウマは狂気熊と相対していたが、相手が痺れを切らしてから突っ込んでくる。
ユウマは突っ込んできた狂気熊の突進をジャンプして躱す。
空中に回避したユウマに狂気熊は腕を振るう。すると、腕から魔力で構成された斬撃が飛び出す。ユウマの三日月と同じ原理だろう。空中で二段ジャンプで初撃を躱す。ゆうまが躱した事で後ろに生えていた樹木に直撃する。その樹木は綺麗な断面図で両断された。ユウマが躱した事を確認すると、もう一撃を放ってくる。
「喰らいやがれ! 《三日月》 」
ユウマも負けずと三日月を放ち、対抗する。互いの魔力と空気の斬撃が激突するが―――――ユウマの攻撃が多少だが、勝っていた。打ち勝ったユウマの三日月が狂気熊に当たる。狂気熊の腹部に当たるが、血を多少流すだけで終わる。致命傷には程遠い。
狂気熊は再度、腕を振るい、斬撃を放つがユウマはを無月を使い対抗する。蹴りから放たずに腕で放つ三日月では相殺されて、相手にダメージを与えられない。相手も遠距離だと、無意味だと気づいてか、接近してくる。接近してくるスピードに乗って腕を振るう。
ユウマは無月を使い、受け止めた。その結果、互いにダメージを負う。狂気熊は(バーサクベアー)の腕には裂傷が。ユウマの腕には打撲を負う。本当は、そのまま腕を切り落としたいのだが、少し斬りつけるぐらいしか出来なかったのだ。
そして、攻撃を受け止めた腕も痛い。固有能力の無刀流の補正と魔力を腕に纏い、強化されていたが、けっこうな痛みがある。
「我、望むは氷の武器 《アイスウエポン》 」
氷の槍を作成してから、構えたのだ。接近戦は、危ないからな。
俺は攻撃を躱しながら、槍で少しずつ攻撃をしているがダメージは、ほとんど与えられていない。
「バーサクベアーの毛皮には斬撃耐性が付いているから、生半可な斬撃は通用せんぞ!」
アンソルさんの言葉が聞こえた。
レイゲルもアンソルさんもさっきの攻撃のダメージが残っているみたいだからそこに待機してもらっている。
俺は、アイスウエポンでハンマーを作成した。
ハンマーで攻撃したが、俺が振るったぐらいの力では致命傷にはならないのだ。
そこで、俺は閃いたのだ。
ウォーターを使ってから、バーサクベアーの顔を水の膜で覆ったのだ。
流石の魔物でも、息をするみたいだな。
息ができずに暴れているが、暴れられるとこっちも魔力を多く使ってしまうし、操作が大変だ。
これが、知恵のある相手だったら、こんな水の塊から抜け出す事も簡単なんだろうな。
5分ぐらい経っても微かに動いているので、一応、無月を使って首をはねてやった。
恐ろしい相手だった。
真っ向からだと勝てなかっただろう。まぁ負けることもないだろうが。
「二人とも大丈夫だった?」
俺は、みんなの方に戻ってきたのだ。
「小僧、すまない、助かったわい」
「ユウマがバーサクベアーを倒すとか驚いたぜ」
「ユウマさん、すごいです」
3人がそれぞれ口を開いた。
「誰か、バーサクベアーの討伐証ってどこか知らないか?」
それから、アンソルさんとレイゲルさんが剥ぎ取りを始めた。
俺は剥ぎ取りが下手くそだから、2人に任す事にした。
「やっと、終わったぜ」
30分ぐらいしてやっと、剥ぎ取りが終わったみたいだ。
何でも、討伐証以外にも爪とか牙や毛皮が装備の素材になるらしくて剥ぎ取っていたんだとか。
帰りの途中にビッグベアーが居たのだ。
幸い、まだ気づかれていないので、逃げることも出来るがどうするか相談を始めた。
まぁ、討伐することにしたのだ。
「我が、具現化するは汝を縛る氷の鎖 《アイスチェーン》 」
ビッグベアーは、突然現れた氷の鎖で動きを封じられてしまったのだ。
レイゲルとアンソルさんが攻撃してトドメを刺したのだ。
あっけないな。
剥ぎ取りも済んだので、帰った。
夕方に町まで帰ってこれたのだ。
アンソル武具店まで着いてから、今回の戦利品の確認を始めたのだ。
俺の報酬はバーサクベアーの毛皮や爪を使った装備を一式作ってもらえる事になったのだ。
他の素材は全部譲ったのだ。
一応、ギルドで受けたクエストの報酬は全員で4等分にすることになった。
俺も異論はない。
9匹のオークで4500G,ビッグベアーで3500G,バーサクベアーが7000Gで、合計が15000Gだ。4人で割れば3750Gだ。
クエストは後からでも、受けれることが分かった。
クエストが残っていたらだけどな。
ミーアが報酬をこんなに貰えないって言ってきた。
確かに、ミーアは今回そんなに活躍はしていないけど、誰も気にしていなかった。
どうしても、受け取りそうになかったから明日4人で打ち上げをするのをミーアの奢りって事で話がまとまったのだ。
現在は、酔っ払いの酒場って名前の酒場に居ます。
そして、アンソルさん以外の3人は机に倒れているのだ。
何故? 酒場に居るかっていうと...
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遡る事、3時間前、
ミーアの奢りで打ち上げをすることを決めたから、どこでするかを話し合っていた。
「打ち上げをするっていうのは、別にかまわねーが、どこでするんだ?」
レイゲルが聞いてみた。
「俺の部屋でするか?」
「さすがに宿の部屋に4人で酒飲んだり、騒いだりしたら、迷惑がかかるんじゃないのか?」
アンソルさんの言葉で、確かに迷惑がかかるかもしれなと思い、却下になった。
「あの~? 酒場とかで良いんじゃないでしょうか?」
ミーアの意見に賛成してから、どこの酒場に行くかという話になったのだ。
「酒場なら、俺がこの間お世話になった酒場があるからそこに行かね?」
「酒場なら、どこもたいして差がないしOKだぜ」
皆が了承したので、チンピラ退治を頼まれた「酔っ払いの酒場」って名前の酒場に決まり、皆で来たのだ。
「マスター、久しぶりです」
俺がマスターに声をかけると、
「ユウマ君じゃないか
まだ、一週間ぐらいしか経ってないんだけどね」
「今日は普通にお客として来たから」
俺達は、そう言ってから近くのテーブルに座ってから料理や酒を注文し始めた。
レイゲルとアンソルさん、酒を飲み始めたのだ。
俺も少しだが、飲んでいたけどな。
少ししてみると、レイゲルが酔っているのだ。
俺とミーアにも酒を勧めてきた。
前回に宴会?した時には、ミーアには飲まさなかったのにな。
完全によっていやがる。
まぁ、今回は死ぬ可能性だってあったしな。
少しぐらい飲んでも大丈夫だと思い、止めなかったのだ。
思えば、ここで止めておけば、未来であんな悲劇が起こる事もなかったのだろう。しかし、彼はその事を知らなかったのだ。
俺達にも酔いが回ってキタころだろうか、アンソルさんが新しい酒を注文した。少しして、その酒が運ばれてきたのだ。
アンソルさんがグラスにその酒を入れてから、飲み始めたのだ。
「美味い!」「酒はこうじゃねーとな」とか言いながら飲んでいるのを見ていたら、欲しくなったので俺達も飲み始めたのだ。
その酒は、美味しかった。
だが、アンソルさん以外の俺達は数十分後に酔いつぶれていたのだ。
そして、今に至る。
そこで、俺の意識は途切れたのだ。
鳥が鳴いている声で目が覚めた。
目の前を見てみると、床で寝ているレイゲル。マスターと一緒にカウンターで酒を飲んでいるアンソルさん。 俺と同じく机にうつ伏せになって寝てるミーアが居た。
寝ていた俺達3人には、布団がかけてあった。
今の季節は5月だが、やっぱり朝は冷えるから布団がありがたい。
「おや、起きましたか」
「小僧、起きたみたいだな」
マスターとアンソルさんが声をかけてきてくれた。
「おはようございます」
挨拶をしてから、立ち上がろうとしてみたが、思うように体が動かないのだ。フラフラするのだ。頭痛もある。
「二日酔いみたいだね」
マスターがそう言ってから、水を持ってきてくれた。
俺達の会話でレイゲルとミーアも起きたのだ。
二人も二日酔いみたいだな。
マスターにお代を払ってから宿に戻る事にした。
アンソルさんは店に戻ったのだ。
俺達3人は宿に戻ってから朝食を食べてから、それぞれ部屋で休む事にしたのだ。




