最終決戦⑦~決着には早かった
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ユウマ、ブルトル、アントニィの三人の連携とも呼べれる程の役割分担で鬼魔人――――イッカクを見事打倒したと思われたが、突如としてイッカクの亡骸の左胸が、ドクン、ドクンと脈打ち始めたのだ。
「――――なっ! 完全に息絶えた筈なのに……」
ユウマの言葉に反応する如く、脈打つ音が次第に大きく、強くなってきている。
「一旦、引くのじゃ!」
三人はブルトルの言葉を皮切りに距離を取ろうと移動をしようと行動を始めるのだったが―――――
『おい、待てよ。黙って、立ち去るなんてつれないぜ』
聞き覚えのある声がイッカクの亡骸の左胸――――つまり、魔核から聞こえた。そして、確かに殺したはずのイッカクが立ち上がっていたのだ。
「「「なっ!?」」」
その光景を見てしまった三人は驚きで、上手く言葉を発する事が出来なかった。
『第二ラウンドだ!!』
その言葉で強制的に現実に戻されたが、三人とも現状を上手く理解出来ていないのだ。
「ちょっと、待ってくれ! どうして、お前が生きている? それと、何で弟の方の声なんだ? 」
ユウマは確かにイッカクが息をしていない事を確認しているのだ。完全に殺したはずなのだ。それと、さっきからイッカクの亡骸から声を発している声はイッカクの弟の声である。ユウマが最初に打ち破った相手で、何故か生きていたのだ。
『フン、理解の無い奴等だな。我も詳しくは理解していないが、我は魔核の状態で生きているのだろう。今は兄者の身体に強引に魔力を流し、操作しているにすぎん!』
そもそも、最初の状態から信じられないのだ。イッカクの弟は確かにユウマ(達)との闘いで死んだはずなのに、兄貴であるイッカクに喰われたことで魔核の状態で復活したらしいが。その過程が不明だ。何がどうなれば、死んだ筈の者が復活できるのだろうか? 俺みたいに神に転生という形での復活は分かるのだが……ユウマは兎に角思考し続けた。
「師匠、どうしますか?」
「まさか、ここで連戦になるとは……正直ヤバいじゃろ」
アントニィとブルトルは小声で話し合っている。ユウマは少し離れた場所に居る二人の様子を一瞥し、悩んでいた。二人とも魔力が限りなく、ゼロに近い――――つまり、戦闘を続行するのは無理だろう。それに比べ、自分は魔力が3,4割と云ったぐらいだが、残っている。ならば、することは一つである。
「《アナイアレイション》 」
残りの魔力をすべて使い切る勢いで二度目の魔法を発動した。大魔導書の能力で詠唱破棄を行い、完全なる不意打ちで魔法を発動した。最初に比べ、既に魔力の波長を合わせてある魔法の媒体となる地面が存在お蔭で最初より少ない魔力で効率的に発動出来た。
『―――――!!! 』
詠唱破棄による、不意打ちで発動した《アナイアレイション》は容赦なく四方八方から大量な鋭利な刃物が襲い掛かった。最初と遜色のない程の大量の武器がイッカクの亡骸に突き刺さった。全身を埋め尽くさんとばかりの武器が刺さっている。勿論、魔核のあると思われる左胸の辺りにも容赦なく狙ってある。
イッカクの身体は操り人形の糸が切れたかのように、地面に倒れ動かなくなった。
「ユーマ、やるじゃねぇ~か!」
「お主は、こうなる事も計算して魔力を温存しておいたんじゃな」
アントニィとブルトルがユウマを称賛しながら、近寄ってくる。
「いやぁ~、危なかったです。偶然ですよ。だいたい、全魔力を一撃に込めれる程魔力操作の練度は高くありませんよ 」
ユウマの言葉通り、全魔力を一発で放出する事は簡単な事ではないのだ。特に魔力量の多い者ほど、簡単にはいかない。つまり、ユウマは意図して魔力を温存していた訳ではない。偶然、レベルアップの影響で増加した魔力を使い切れなかっただけだ。
「なっ! つまり、狙って温存した訳ではないのか!?」
「しかし、よくやってくれたわ。儂等に闘う力は残って無かったからのぉ」
二人の言葉を地面に仰向けになりながら、ユウマは聞いていた。これで、ユウマも完全に魔力を使い切った。
「疲れました。早くお風呂に入って、休みたいです」
戦闘時間自体は今までで一番、短いが今回の戦いが一番大変だったと三人は言えるだろう。そして、こんな時にも風呂に入りたいと言ったユウマは日本人らしいだろう。
三人は談笑をしながら、身体をやすめていたが、それは唐突に終わりを告げられた。
「―――――ッ!! 」
ユウマの喉元に漆黒に染まってる刀が付き付けられたからだ。現在は、薄皮一枚のみ、切っているが動けば殺すと示唆している。
『これで、お前も一度死んでる……これで対等だな』
言葉を発した本人―――――全身真っ黒な人型に三人の視線が集まった。その人影っぽい奴の頭には二本の角が生えていた。
『互いに一度ずつ殺されたんだからな』
その人型はイッカクの弟の声で話している。つまり、この人型はイッカクの弟と云うことになる。
「おいおい。まだ、死んでなかったのかよ……死んだふりなんて趣味悪いぜ」
仰向けで倒れ込んでいるユウマは、抵抗することは無駄だと理解したが、口だけは動かした。
『最初に死んだふりをしてからの奇襲を仕掛けたのはユーマだぞ』
イッカクの弟の言葉を聞きながら、そういえば、そうだなと思いユウマは苦笑した。
「それで、ここで俺を殺さないって事は何か望みでもあるのか?」
普通なら、こんなチャンスがあるのに殺さないなんておかしい。今の状況ならユウマ達を殺すことは容易ではあるが、殺さない理由なんて無いに等しい。そう考えると、ここでトドメを刺さないのには理由がある筈である。
『そうだ、貴様をここで殺さないのには理由がある。これから試験させてもらうぞ』
試験だと、何故だ? 何の試験なんだ? 考え出せば、キリが無い数の疑問が浮かぶ。
「……それを俺が素直に受けるとでも?」
『ああ、ユーマなら受けるだろ。それとも、ここで死ぬか?』
ここは受けなくては死ぬみたいだし、受けるしかないのだ。
「わかった、受けるぜ。何をしたら良いんだ? それと、結果がどうであれ、あの二人には手を出さないでくれ 」
アントニィ達も黙って、見ている。今、何かをすれば全滅だと理解しているからだ。
『それは、構わん。なに、することは一つだけだ―――――』
イッカクの弟は一旦、言葉を切り続けた。
『―――――これから、我の放つ一撃を防ぐだけだ!』
要件を伝えると、すぐに漆黒の刀を引いてユウマを立てる様にした。
「……わかった、たった一撃で良いんだな 」
ユウマは立ち上がり、意識を集中した。″ディメンション″から武器を取り出すことはしない。鈍らな剣で受け止めても貫通するのが、目に見えているからだ。それならば、素手で『無刀流』の補正に期待しよう。