街の防衛戦⑬~アントニィVS一角の鬼魔人
今回は主役は出ません。
それと、『異世界でフラグ回収しています!!』には関係ありませんが、6月1日の0時から新連載を始めました。
題名は『異世界で蟷螂に転生したら死神と呼ばれています』です。宜しければ、そちらも見て下さい。
詳しくは活動報告に載せておきます。
sideアントニィ
東側でブルトルさんが魔人を倒す10分程前の出来事。
「A隊!突撃! B隊は奇襲! C隊は援護だ!」
俺は仲間の騎士達に指示を出していた。
この街の騎士団長としてここで魔人に敗北する訳にはいかないのだ。
(早く倒してから東側と西側の魔人を倒さなくてはならないのだっ!)
俺は焦っていた。
東側にはブルトル師匠が居るが・・・西側には強力な魔人に対抗出来る人が居ないから早く駆け付けたいのだ。
手数と巧みな連係で”一角の魔人”とも渡り合えている。
それでも、決定打には程遠いのだ。
「今だっ!」
俺は伝えておいた作戦通りに合図を出した。
この合図を出したら、魔人と接近している者は離れる様に伝えてある。
そこにC隊の魔法攻撃を喰らわす作戦なのだ。
A隊とB隊が下がった。
下がると同時に炎、風、雷の三属性の魔法が一角の魔人に向けて放たれた。
C隊は6名しかいないが、属性はこの三種類に統一してある。
他の属性の魔法を使える者は違う隊に所属している。
魔人に三属性の魔法は直撃した。
魔法で出来た砂煙が風に流された。
「連携が素晴らしいゾ。
我の配下に加えてやるゾ?どうダ? 」
一角の魔人にダメージは無しに等しい。
「俺達は騎士だ!魔人の手下には死んでも成らんぞ!
騎士を嘗めるなよ!」
魔人は声色一つ変えずに「ならば死ネ!」とだけ返した。
一角の魔人は大口を開き、息を吸い込んだ。
「ヤバい!吐息が来るぞ!防御しろ」
俺の叫びの後に強力な吐息が襲ってきた。
「岩よ、我を守れ 《ストーンシールド》 」
「風の衣よ、軌道を逸らせ 《エアーマント》 」
「水の壁よ、我を守れ 《ウォーターウォール》 」
三人の騎士が咄嗟に防御系の魔法を発動してくれた。
三種類の防御系の魔法は吐息で一瞬に欠き消された。
威力を多少は弱める事には成功したが、十分な破壊力があるのだ。
そんな攻撃が騎士達に襲いかかったのだ。
「《大楯》《盾撃》 」
俺は騎士達の前に飛び出してから二連続で盾の技を発動した。
一角の魔人の吐息と俺の盾の技が衝突し、爆発を起こした。
俺は10メートル程吹き飛ばされたが、他の騎士たちは無事の様だ。
「隊長!ご無事ですか!?」
「助かりました」
「なんて威力の吐息だ!」
俺も急いで立ち上がって剣と盾を構えようとしたが、左で持っていた盾に亀裂が入り、左腕の骨を折ったみたいで盾を構える事が出来なかった。
魔人の進行を部下の騎士たちが防いでいる。
(何て強さだ・・・俺よりも断然強いとは・・・・せめて、ブルトル師匠が来てくれるまでは踏んばらないと)
俺が一角の魔人の方に走り寄ろうとする直前に『ドンッ!』という轟音が響いた。
俺は慌てて音のした方角に振り返った。
音のした方角は東側だった。
(ブルトル師匠の仕業だろう)
ブルトル師匠は地属性の魔法を使うからそうだと思い込み、一角の魔人と相対した。
すると、一角の魔人は信じられないと言った様子の表情だった。
「我が弟が人間風情に敗れタというのカ・・・許さんゾ」
一角の魔人の話が本当ならブルトル師匠が魔人の一体を倒したらしい。
俺は嬉しさのあまりに自然と笑みが零れていた。
その一瞬の油断が魔人にチャンスを与えたのだ。
一角の魔人が吐息を放ったのだ。
東側に行く進路沿いにいた騎士達にだ。
その騎士達も一角の魔人の話を聞いていて油断していたのだ。
気づいた時にはもう遅かった。
騎士達は防御すら出来ずに吐息を喰らったのだ。
その場にいた騎士達は全滅だろう。
そんなの気にも留めずに一角の魔人は東側に走り出した。
「急いで奴を止めるのだ!走れ!」
俺は急いで騎士団に指示を出した。
最小限の人数と怪我人を残して一角の魔人を追いかけた。
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sideブルトル
魔人と鬼共を殲滅し終えたから5分も経たないうちにソイツは現れたのだ。
儂らが身体を休めていたら、凄い勢いで何かが近づいてきているのが分かった。
儂らも戦闘が出来る様に構えた。
少ししてからソイツが儂らの前に現れた。
「貴様等が我が弟を屠っタのか?・・・許さんぞ」
儂の目の前には4メートルを超える程の巨体の大鬼がいた。
ソイツは角が一本しか無かった。
その大鬼は”一角の魔人”と呼ばれている魔人だったのだ。
(こいつが此処に居るという事はアントニィ達は殺されたのか!?
・・・ヤバいぞ!此処には満足に戦える奴は僅かだぞ。儂も大技を連発した所為で魔力がほぼ空じゃ)
一角の魔人と冒険者達の間に緊張が高まりつつあった。